ホラシノブ |
私の実家は那覇市の住宅密集地にあり、ほぼコンクリートとアスファルトに囲まれていて、庭らしい庭のある家は少ない。実家の向かいにごく小さなもの、通りの端の家に同じくらいごく小さなものものがあるだけだ。緑が圧倒的に不足している。実家に庭は無い。門内に幅25センチ、長さ1メートルほどのごく小さな花壇があるだけ。 仏間である6畳の畳間は祖母の寝室でもあった。そこは西側にあり、西面は全面掃き出しの窓となっており、窓の外は幅1メートルほどのベランダとなっていた。祖母の寝室は西日があたり、夏はとても暑くなった。東京の大学生活から沖縄に戻って実家に住むようになってから私はそれに気付き、ベランダの外側にネットを張りツル植物を這わせた。既にベランダにはいくつかの鉢物が置いてあったが、それを増やした。 私の部屋の上は陸屋根の屋上で、コンクリートの輻射熱で夏場は部屋に熱がこもった。それを何とかしようと、部屋の上にあたる部分にプランターや鉢物を置いた。 そんなこんなでその頃、私は園芸店によく通い、当時流行っていた観葉植物などをよく目にしている。シノブという植物もおぼろげに記憶している。吊り下げられた小さな素焼き鉢にモサモサした葉を垂れ下げている植物であった。 ホラシノブはシノブと名が付いているが、私のおぼろげな記憶にあるシノブとはあまり似ていない。シノブはもっと緑が濃かった、忍という名に相応しく、もっと小さく大人しい感じがした。でもおそらく、形か何かが似ているのであろう。 ホラシノブ(洞忍):鉢物 ホングウシダ科の多年生シダ 東北南部〜南西諸島などに広く分布 方言名:不詳 名前の由来は資料が無く不明。洞忍は私の想像。忍は広辞苑にあり「シノブ科のシダ」のこと。シノブは沖縄には生育しないようだが、私は鉢物で見たことがある。小さなシダで、本種はそれよりずっと大きいが、形が似ているものと思われる(見たのは若い頃なので記憶はおぼろげ)。ホラは洞と法螺が考えられるが、本種が法螺貝に似ているところは少しも無いので法螺は除外、洞は「崖がけや大きな岩・大木などの、中がうつろな穴」(広辞苑)のことで、こちらの方がずっと意味として似つかわしい。 洞はしかし、暗い場所をイメージさせる。ところが本種は「陽当りのよい山裾の路傍や斜面などに多く見られる」と文献にあった。穴の中より太陽が好きなようだ。 根茎は短く、地上を這い、葉は束生する。葉は3〜4回羽状複葉で葉の長さは15〜60センチ、小葉の先が丸いのが特徴。全体の高さは30〜70センチ。 |
記:島乃ガジ丸 2013.10.23 ガジ丸ホーム 沖縄の草木 |
参考文献 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行 『藤田智の野菜づくり大全』藤田智監修、NHK出版編 『やんばる樹木観察図鑑』與那原正勝著、ぱる3企画発行 『熱帯の果実』小島裕著、新星図書出版発行 |