ハラン
 大学生の頃、仕出し屋さんでバイトしたことがある。仕出し屋さんとは「料理や弁当などの仕出しをする家」(広辞苑)、仕出しとは「注文の料理を調えて届けること」(〃)のことで、そこは主に弁当を作り、スーパーなどへ卸していた。
 バイトの仕事は、ご飯やおかずを弁当箱に詰める作業だが、たまには料理も手伝った。私はそこで、冷めても美味しい鶏の唐揚げとタケノコの煮物の作り方を覚えた。
 料理以外で覚えたものもある、モノの名前だが、それしか記憶に残っていない。
 「唐揚げの前にはバランを添えとけ。」と仕出し屋の社長が言う。
 「バランって何ですか?」と隣の先輩に訊く。
 「そこの緑色の、ヒラヒラした、ギザギザのやつ」との答え。
 後日だったと思うが、社長に訊いた。
 「あれ、何でバランって言うんですか?」
 「バラン、バランとした感じだからさ。」
 「はー、確かにバラン、バランとしていますね。」
 「嘘だよ、ハランって言う植物があって、昔はその葉を切って、形を作って、料理の飾り物にしたんだ。バランという名前はそこから来ている。」

 さっき、広辞苑で確かめてみた。バランは「ハランとも。ハランの葉を使うことから・・・(中略)・・・鮨や弁当の副食を盛り合わせるとき、仕切りや飾りに使う、葉を切ったもの。」ということ。仕出し屋の社長は正しかった。

 ハラン(葉蘭):添景・切花・薬用
 ユリ科の常緑多年草 中国原産 方言名:なし
 名前の由来、ユリ科の植物で、葉がランの葉に似たものをランと呼ぶのは多くある。ハについては、広辞苑に「婆蘭・馬蘭の転」とあった。しかしながら、婆さんの蘭といわれても、馬の蘭といわれても、何のことやら、私の脳味噌では解釈不能。むしろ転化された「葉蘭」の方が理由付けしやすい。「花より葉が主人公の蘭」となる。
 葉の長さは60センチ内外。幅も広く、深緑色して美しいことから切花や料理の敷物として利用される。葉に白斑の入った種もある。
 花は、文献によると「紫褐色で、地下茎から出て地際に咲く」とのこと。私は未確認、ハランそのものをあまり見ない。沖縄県内での自生は見られないとのこと。
 地下茎が横に這い広がる。半日蔭を好み、庭の材としては根締めに多く用いられるとのこと。それは確認済み、私が見たのもそのように使われていた。
 記:島乃ガジ丸 2010.10.16  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
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