ハナショウブ/キショウブ
 あるところにはあるのだろうけど、私は沖縄でハナショウブを見たことが無い。珍し物好きの従姉の別荘には小さな池があるが、その縁にハナショウブは似合いそうなのだが、植えてはいないようである。
 概ね年に2回、私は旅をしている。冬、寒さを味わいに行くこともあるが、たいていは春と秋にしている。春はだいたい4月から6月の間の数日間となっている。その時期は花の多い時期である。サクラ、菜の花、ツツジ、ボタン、シャクヤク、モクレン、フジなどなど。6月、池のある公園を散歩するとたいていハナショウブに出会う。沖縄では見たことの無いハナショウブだが、したがって、旅先では、私は何度も会っている。
 今回、アヤメ科アヤメ属の植物をいくつか紹介しているが、既に紹介済みのものを含めて、それらの学名を載せておく。アヤメ属はIrisとなる、あのアイリスである。
 アヤメIris sanguinea Hornem.
 イチハツIris tectorum Maxim.
 シャガIris japonica Thunb.
 ドイツアヤメ(ジャーマンアイリス)Iris germanica L.
 ダッチアイリス(アイリス)Iris hollandica Hort.
 ハナショウブIris ensata Thunb.
 ヒオウギアヤメIris setosa Pall.
 カキツバタIris laevigata Fisch.
 ちなみに、サトイモ科のショウブはAcorus calamus var. angustatusとなっている。

 ハナショウブ(花菖蒲):花壇
 アヤメ科の多年草 日本に自生するノハナショウブの改良種 方言名:なし
 「ノハナショウブを原種として、日本で改良された。」と文献にあったが、ノハナショウブが本家であるならば、ノハナショウブはハナショウブで、本種はオオバナハナショウブとでもなりそうだが、何故か分家が代表格の名前となっている。
 ハナショウブは花菖蒲と書くが、菖蒲はショウブと読んでサトイモ科の植物を指し、アヤメと読んでアヤメ科の植物も指す。もともと両者が見た目に似ているところからそういうことになっているようだ。ハナショウブはショウブとあるが、アヤメ科アヤメ属。
 高さは80センチほど。伸びたその茎の先に大きな美しい花をつける。多数の園芸品種があり、花色も白、桃、紫などさまざま。開花期は初夏。


 キショウブ(黄菖蒲):水辺
 アヤメ科の多年草 ヨーロッパ、地中海地域の原産 方言名:なし
 黄色い花の咲く菖蒲(ハナショウブを指す)に似た植物ということでキショウブという名前。『寺崎日本植物図譜』に和名としてキショウブとあったが、キハナショウブ(黄花菖蒲)とも言うらしい。念のためネットで調べたら、両者、学名は一致する。
 明治中頃に渡来し、観賞用として栽培されたが、今では野生化したものも多く見られるという。茎の高さ60〜100センチ。ハナショウブと同じく、湿ったところを好む。
 鮮黄色の花。開花期は初夏と文献にあり、私が見たのは6月
 記:島乃ガジ丸 2006.8.25  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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