ダンギク
 写真の日付が2005年4月とあるので、もう3年前の話となる。従姉の別荘を訪ねたら、面白い形に花をつけている植物を見つけた。見たことの無い植物。
 その庭には、その他にも沖縄ではあまり見かけない植物がいくつもある。セツブンソウやツルヒメソバなどもそうであり、それらは既にこのHPで紹介済みである。
 従姉は団塊の世代である。周りに同世代の人間がうじゃうじゃいる中で、何とか目立ちたいと考える世代である。だから、珍しい植物をわざわざ倭国から取り寄せて、庭に植えて、独自性を表現しているのではないかと私は推理している。しかしまあ、そのお陰で、私は私の知らない植物と出会うことができるのだ。ありがたいことである。

 面白い形に花をつけている植物を見つけた時、別荘に従姉は不在だったので、その植物が何物であるか訊けなかった。写真を撮ってあったので、家に帰って、文献で調べる。沖縄の植物を紹介している文献に該当するものは見つからなかった。「うーん、沖縄には無いものか、やはり珍しいものであったか。さすが団塊。」と感心する。
 翌週、従姉に会えたので、訊いた。
 「駐車場の塀の傍に青い花が咲いていたが、あれ、何て言うの?」
 「青い花、あー、あれ、あれはダンギクって言うのよ。」
 ということで、私はダンギクという名前の植物を知る。沖縄の植物を紹介している文献には載っていなかったが、ダンギクは、倭国では有名なようで、広辞苑にあった。

 ダンギク(段菊):花壇
 クマツヅラ科の多年草 九州に自生、朝鮮、台湾、中国に分布 方言名:不詳
 広辞苑に「花を各段の葉腋ごとに密生するのでこの名がある」とあった。小さな花の群れが段々につく。私が見たものは4段になっていた。ダンギクのギクは菊と漢字があてられている。が、本種はキク科でも無く、また、花が菊に似ているということも無い。おそらく、葉がキクに似ていることからキク(菊)とついたと思われる。
 枝先の葉腋から集散花序を出し、それが何段かの層となる。花色は紫、または青紫、開花期は9月から10月と文献にあったが、私が見たのは4月。沖縄では早いのだろう。高さは1m程度とあったが、私が見たものはどれも50センチに満たなかった。
 日本では九州に自生するというから暖かい地方の植物だと思われるが、沖縄の植物を紹介しているどの文献にも本種は記載が無い。沖縄には自生していないようである。全体の見た目が可愛く、草丈も低いので花壇向きだが、沖縄ではあまり見ない。
 記:島乃ガジ丸 2008.3.7  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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