バショウ
 バショウはバショウ科バショウ属で、食用のバナナと同属である。両者はとても良く似ている。茎と見える部分、葉、花ともに見た目はそっくり。人の役に立っているということでも似ている。バナナは食料になり、バショウは芭蕉布の材となっている。違いの判る人から見れば、両者にもいろいろと細かい違いがあるかも知れないが、違いの判らない男である私には、バショウの実は小さく食えない、バナナは食えるという違いだけ。
 バナナは草である。よって、バナナは果物では無く、野菜である。しかしながら背が高く、茎に見える部分も太いので木に見える。という訳でかどうかは不明だが、生産されたバナナは概ね、果物として扱われている。バショウも同じく草である。そして、同じく背が高くなって、茎も太くなる。しかし、太さは木だが、その茎に触れると柔らかい。その柔らかさから「草なんだな」と、何となくだが納得できる。
 バショウの「茎に見える部分」は、じつは茎では無く、葉柄が重なり合って茎に見えている。本当の茎は地下にあるらしい。その茎に見える部分を根元から切ったことがある。大量の水が切り口から流れた。柔らかくて、見た目軽そうな茎はとても重かった。

 沖縄では、食料となるバナナをミバショウ(実芭蕉)、繊維を採るバショウをイトバショウ(糸芭蕉)と呼び分けているとのこと。広辞苑には、バショウは芭蕉で、バナナは香蕉(コウショウ)と載っていた。確かに、バナナの匂いはいい匂いだ。

 バショウ(芭蕉):添景・繊維
 バショウ科の多年草 熱帯アジア、アメリカ、アフリカ原産 方言名:バサー
 バショウという名前の由来は不明。『沖縄大百科事典』には、原産が上記の通り「熱帯アジア、アメリカ、アフリカ」とあったが、広辞苑には「中国原産」とある。少なくとも日本へは中国から渡来したということなのであろう。バショウは、よって、芭蕉という中国語なのだと思われる。それを日本語読みしてバショウなのかもしれない。
 バショウもバナナと同じく草本類である。しかしながら背が高く、茎に見える部分も直径15〜25センチくらいと太いので木に見える。「茎に見える部分」は、じつは茎では無く、葉柄が重なり合った偽茎と呼ばれるもの。本当の茎は地下にあるらしい。地下はまだ確認していないが、偽茎が「葉柄が重なり合ったもの」については確認している。バショウの茎を根元から切ったことがある。確かに厚めの葉柄が重なり合っていた。
 高さは5mほどになる。芭蕉布の繊維が採れることで有名。バナナに似た果実をつけるが、食用にはならない。沖縄にはバショウ属の仲間が3種類あるとのこと。繊維を採るリュウキュウバショウ(イトバショイウ)、生食用のバナナ(ミバショウ)、観賞用のビジンショウ(ハナバショウ、ヒメバショウ)とのこと。観賞用については未確認。
 記:島乃ガジ丸 2008.4.30  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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