アリモリソウ
 落人伝説について詳しいことは知らないが、それはあちらこちらにあるらしい。詳しいことは覚えていないが、平家の落人の話を何かで読んだ記憶がある。
 沖縄にも落人伝説はある。沖縄の場合は平家ではなく源氏。『保元物語』に出てくる豪傑、源為朝が琉球に落ち延びて、その息子が琉球王朝の始祖になったと琉球の正史が伝えている。正史といえど、本当かどうかは昔のことなので不明。
 落人というと、でも、源氏よりは平家の話が、私の不確かな記憶だが、多いのではないだろうか。壇ノ浦で敗れた後あちこちに逃げ延びて、その土地で細々と暮らし、あるいは大きな影響を与えつつ、生きていったのではないか。詳細は不明だが。

 ある日、末吉公園を散歩している時に、可憐な花が咲いているのに気付いた。写真を撮って調べた結果、アリモリソウであることが判明した。アリモリ、いかにも平家らしい名前だと感じ、何か平家の落人に関係あるのではないかと想像した。
 調べると、平有盛なる武将がいて、壇ノ浦の後、奄美に逃れたという伝説がある。アリモリソウのアリモリがその有盛に関係あるのかどうか、正確なところは不明だが、もしも関係あるとしたら、可憐な花の名前になる武将がその昔いたということになる。イケメンだったのかもしれない。これもしかし、詳細は不明。
 今回は詳細不明だらけの話となったが、歴史は詳細が不明だからこそ、いろいろ想像できて楽しい。それが歴史のロマンであると思う。

 アリモリソウ(有盛草):下草
 キツネノマゴ科の多年草 種子島、屋久島以南、南西諸島に分布 方言名:不詳
 アリモリソウの名前の由来は不明。アリモリソウは無かったがアツモリソウが広辞苑にあった。ラン科の多年草で「平敦盛の背負う母衣(ほろ)に見立てての名」とのこと。
 アツモリがいるならばアリモリもいるかも、と思って平アリモリを調べると、有盛なる者がいた。平有盛は壇ノ浦で敗れた後、奄美に落ち延びたとの伝説があるらしい。奄美大島には平有盛を祀った平有盛神社があるとのこと。
 アリモリソウは種子島、屋久島以南に分布するので、奄美大島にも普通に見られたであろう。そこに平有盛がいた。何らかの関わりがあったとは十分に考えられる。ということで、定かではないがアリモリソウ、有盛草としておく。別名ツノツクバネ。
 高さは15〜40センチ。石灰岩地帯(沖縄島だと南部)の森林内に多く見られる。
 花色は淡い桃色、枝先から花柄を伸ばし数個の花をつける。開花期は、文献に10月頃とあったが、私の写真は12月。ということで、10月から12月としておく。

 花
 記:島乃ガジ丸 2009.4.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
inserted by FC2 system