ヤマブキ
 ヤマブキという名の植物があることは若い頃から知っている。学生の頃は東京に住んでいて、あちこちへ旅もしているので、おそらくその実物も見ている。たぶん、旅の写真にはヤマブキの写ったものもあるはず。その写真を見ずとも、ヤマブキがどのような姿をしていて、どのような花が咲くのかは、だいたい思い出せる。
 ヤマブキはまた、テレビの時代劇も思い出させる。
 「お代官様、例の件は何卒よろしく。これはほんの手土産ですが、お納め下さい。」と悪徳商人である大黒屋の主が言う。悪代官が箱を開ける。
 「ほほう、なかなか美味そうな饅頭であるな。」
 「はい、それはもう、中味は山吹色でございますから。」
 「大黒屋、お主も悪よのぅ。かっかっかっ」と二人は高笑いする、といった場面。ここで使われる山吹色という言葉は、言うまでも無く小判のこと。広辞苑にも、山吹色は「大判や小判の異称」とある。世にあまたある黄色の花の中でも、ヤマブキの黄色こそが黄色の中の黄色とされているみたいである。その通りの鮮やかな色。

 ヤマブキ(山吹);添景・生垣
 バラ科の落葉低木 北海道南部〜九州に分布 方言名:なし
 山野に自生している。根元から多数の茎が生え、その1本1本に多数の花がついて、一編に咲き、辺りを黄金色に染める。吹き出すようにして山を染めることからヤマブキという名前なのかと想像するが、正確なところは不明。
 黄金色の代名詞である山吹色のヤマブキである。花一つ一つもきれいだが、群がって咲く様は見事。鮮黄色の花は春、4〜5月頃に開く。
 高さは2mほど。山野に自生しているものは一重の花だが、八重咲き種もあり、それは民家の庭に多く用いられているそうだ。「そうだ」というのは、私はそういうのを見たことが無い(見たかもしれないが、少なくとも記憶には無い)からである。また、沖縄の山野でヤマブキの自生を私は見たことが無い。沖縄に自生は無いようである。さらに、民家の庭や公園などでも見た経験は無い。写真は園芸店で撮ったもの。
 記:島乃ガジ丸 2006.4.30  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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