ヤドリフカノキ
 マジムン(魔物、妖怪の類)やユーレイの存在については、「それらが存在する」という確かな証拠を持っていない。よって、存在するとは思っていない。ただ、この世の神秘のためには存在しても良いのではないかとは思っている。
 ガジュマルの老木に住むという妖怪キジムナーに、過去3回ほど襲われている。肩の辺りが急に重くなって、何かが取り付いているのではないかと感じたこともある。それらはでも、実は、体調不良のせいだと心では思っている。マジムンの存在を信じているわけでは、けして無い。

 今年の2月か3月頃だったか、何かが肩に取り付いていると感じている頃のこと。ある日の夜半(丑三つ時という時間だったかもしれない)、ふと、目が覚めた。私のベッドは、頭の上は西向き(10年以上西枕になっている)の掃きだし窓になっていて、右手側は南向きの、一間幅の窓になっている。窓の外で風が強く吹いていた。ざわざわと葉擦れの音が聞こえていた。何か恐ろしい夢でも見ていたのか、少し汗をかいていた。で、寒い間、開けることの少なかった右手の窓を開けた。サーっと風が入り込んできた。そのすぐ後に、暗闇の中から何か黒いモノ、首の異常に長い大きなモノが、熊のように両手を広げて襲い掛かってきた。
 久々に驚いた。オジサンという歳になってからは、キジムナーに襲われた時もさほど怖さを感じなかったのに、この時はまったく、"凍りついた"というくらい驚いた。心臓が高鳴っていた。でも、マジムンの存在を信じたわけではない。

 翌朝、化け物の正体を確認しに行った。おおよその見当はついていた。首の異常に長い、両手を広げた大きな物体は、大家の庭に植えられたヤドリフカノキの木だった。久しく見ないうちに伸びに伸び、茂りに茂っていた。高さ5m以上、横幅6m以上になったこの木は、その一部が私の部屋の窓を襲っていた。密に葉をつけた伸びた枝は、首にも見えるし、腕にも見えるのだ。

 ヤドリフカノキ(宿りふかのき):観葉植物・庭木
 ウコギ科の常緑低木。分布は中国南部、台湾。方言名:無し
 シェフレラホンコン、またはホンコンカポックという名前の方がポピュラーかもしれない。そういった名で観葉植物としては売られていることが多いようだ。
 沖縄では観葉植物としてだけではなく、緑化樹木としても利用されている。萌芽力が強いので刈り込みして添景、生垣などにも使える。ただ、成長が早いので、民家の庭には使い辛い。放っておくとどんどん側枝を出し、高さ3mを超えて伸びる。こうなると鬱陶しい。大家の庭のヤドリフカノキも既に手に負えないほどに成長してしまって、もはや手入れは諦めているようだ。
 沖縄のような暖かいところでは花も見られる。が、見るほどの価値はたいして無い。

 花

 実
 記:2004.11.26 島乃ガジ丸  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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