ウツギ/サラサウツギ
 昨年、静岡の花博を見学したとき、沖縄からの空路は名古屋では無く羽田にした。東京から静岡へは、沖縄では味わうことのできない鉄道の旅を楽しむこととし、途中の茅ヶ崎で、里帰りしている甥の嫁に会うのも目的の一つで、帰りには、東京で友人と会い、沖縄では上映予定の無い映画『タカダワタル的』を観るのも目的であった。
 茅ヶ崎で一泊したが、小津安二郎が定宿にしていた宿の、小津安二郎がいつも使っていたという部屋に泊まる。そして、たぶん小津安二郎もしたであろう近所の散歩を、私もする。確か時期は5月のことであった。浜辺を歩き、住宅街の中を歩いた。
 小ざっぱりした家々の並ぶ道で、花の、と思われる良い匂いがした。辺りを見渡したがどれだか判らない。3年前(2002年)の5月、奈良を旅した時ウツギの花が満開なのを見つけ、写真に撮り、それが「卯の花」とも呼ばれていることを知った。ここで、テキトーに生きているオジサンは威張って、甥の嫁にメールを送る。
 「茅ヶ崎を歩いていたら花の匂いがした。それはきっと『卯の花の匂う垣根』と歌われているウツギに違いない。ウツギの垣根があるのだろう」といった内容。

 今回、改めて調べたら、ウツギの花にはたいした匂いは無いらしい。そういえば、奈良でも花には気付いたが、その匂いには気付かなかった。東山動植物園のサラサウツギも、親戚の庭のそれも、匂いがあるようには感じなかった。「卯の花の匂う」の「匂う」は、匂うほどに花が美しく咲いている様をたぶん表現しているのだろう。まあ、そういったことで、知ったかぶりのオジサンは時々恥をかいたりするのである。

 ウツギ(空木・卯木):添景・生垣
 ユキノシタ科の落葉低木 北海道から九州まで分布する。
 各地の山野に自生し、高さは1mから2mに達する。幹が中空になっているところから空木となっている。花は白色、小枝の先に円錐状にまとまってつく。一つ一つは小さいがよく目立ち、きれい。開花期は地方によって異なると思うが、概ね5月から6月。
 「卯の花の匂う垣根」の卯の花はこのウツギのことをいう。沖縄には自生しない。


 サラサウツギ(更紗空木):添景
 ユキノシタ科の落葉低木 原産地は日本。
 写真1は名古屋の東山動植物園で撮ったもの。旅から帰って数日後、親戚の家を訪ねたら、そこの庭に同じようなのがあった。それが写真2。八重咲き種のウツギのことを総称してヤエウツギ、またはサラサウツギというらしい。

 花

 ガクウツギも写真があるので紹介したいが、ウツギと名は付いても、本種はアジサイと同じ属になるので、別項とする。 →記事「アジサイ/ガクウツギ」
 記:島乃ガジ丸 2005.9.4  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
inserted by FC2 system