ウコンサンゴバナ
 3週間前のある日、職場でパソコンとにらめっこして作業をしていたら突然、パソコンの画面が消えた。パソコンだけでなく、事務所の電気が全て消えた。停電であった。
 事務所の隣には去年オープンした喫茶店がある。昼飯は家に帰って食っていることもあって、私はまだ一度もそこへ入ったことが無い。停電になってすぐに外に出て、辺りを見渡し、そして、その店に初めて入った。店内の灯りは消えていた。
 「そちらも停電ですか」と訊いた。上品な顔立ちのお姉さんが一人カウンターの中にいて、私の問いに肯いて、そして、「50mほど先で電線の工事をやっているみたいです。それが何か関係あるかもしれませんね」と言う。外に出て、その方向を見る。確かに黄色い電気工事用の車両が停まっていて、何人かが作業をしている。
 午後から始めた1時間ほどの作業はエクセルを使ってのもので、自動保存の設定をしてあるので、無駄になる作業は少しで済むだろう。が、もしも、停電のせいでパソコンの調子が悪くなったら、その分の保障を請求できるのであろうか。などということ確認するため、そこへ向かおうとしたら、向かいの印刷屋さんの事務をやっているお姉さんがバイクでやってきて、「私が今、確かめてきました。停電は工事のミスだったみたいです。すぐに直すとのことです。」と説明してくれた。

 あーそうか、すぐに直るか、ならば、いいかと私は思い、文句を言うのも面倒だしなとも思って、事務所に帰りかけた。そこで、ふと、喫茶店のドアの傍にある鉢物の花に目が止まった。図鑑では見たことがあるが、実物はお初にお目にかかりますの花。「あらまあ何と、あなた、こんな近くにいらっしゃいましたか。」という気分はいい気分。

 ウコンサンゴバナ(うこん珊瑚花):花壇・鉢物
 キツネノマゴ科の常緑低木 原産分布は中南米 方言名:なし
 ウコンサンゴバナのウコンについては資料が無い。苞の黄色いのが目立つところから鬱金のことかもしれないが、定かでは無い。サンゴバナについては、同じキツネノマゴ科のジャスティシア属にサンゴバナ(珊瑚花)という名があり、パキスタス属では赤い花の咲くものにベニサンゴバナ(紅珊瑚花)という名があることから珊瑚花でたぶん当り。
 ウコンサンゴバナという名前より、おそらく、学名の属名でもあるパキスタキスという名で知られていると思う。園芸店にもその名で売られていることが多い。
 草本性であるが、沖縄では低木状に生育すると文献にあった。私は鉢物でしか見たことがないが、花壇を彩る低木としての植栽も多くあるようだ。
 穂状となる黄色い穂の方が大きく目立つ。その苞の先から白い花がピョコピョコと顔を出す。陽光地で花付きが良いが、半日陰でも生育し、花を見せる。開花期は周年。

 花
 記:島乃ガジ丸 2005.11.13  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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