テリハクサトベラ
 3月のある晴れた日、設備工事会社の社長Gさんに誘われて、新原(ミーバル)ビーチへ出掛けた。なにもオジサン二人で海水浴を楽しもうとか、水着ギャルを眺めて心を若がえらさせようというわけでは無い。Gさんの友人に新原ビーチでパーラーを経営している人がいて、その店の装飾がなかなか面白いものだから見せたい、とのことであった。
 Gさんの友人はあいにく不在で、本人の話は聞けなかったが、見せたいというのは外壁の装飾だったので、見ることができた。それは、海から拾ってきた貝殻を壁に貼り付けてデザインされたもの。その店の主人、つまり、Gさんの友人が長い月日をかけて一人で手作りしたもの、とGさんが説明してくれた。細かい作業とその量の多さに驚く。なるほど見事な貝殻装飾であった。
     
 パーラーの傍には大きな岩がそびえ立っていた。岩は隆起珊瑚の石灰岩。2階建ての屋根を越える高さがある。その途中にテリハクサトベラが生えていた。潮風に強い海辺の植物は乾燥にも強い。潮風のまともに当たる岩に根を貼り付かせて、いかにも元気そうであった。見上げた私の目には、青い空の下、灰色の岩の上に照り輝く明るい緑色が、とてもきれいに見えた。
 海辺の公園を歩くと、テリハクサトベラの生垣をよく見かける。管理の行き届いた公園であれば、トベラは高さ1mほどに刈り込まれ、きれいな形を見せている。が、放置されたテリハクサトベラは少しうるさい。高さも2mを越え、伸びた枝葉は倒れるようにして横に広がる。人工的に密植させられたものは、人の手によって定期的に管理してやらねばなるまい。パーラーの傍の、岩の途中に生えていたテリハクサトベラは自然に発生したもの。自然に発生したものは、自然に環境に適した形になるようである。健康に育って、容姿も端麗ということなのであった。

 テリハクサトベラ(照葉草扉):添景・庭木
 クサトベラ科の常緑低木 原産分布は種子島以南、東南アジア 方言名:ハマスーキ
 クサトベラとの違いは、クサトベラは葉の表裏に繊毛があるが、本種には無いということ。クサトベラも葉がてかっているが、毛が無い分、本種はよりてかって見えることからテリハ(照葉)とついたものと思われる。
 高さは1〜2mほど。明るい鮮緑色をした光沢のある葉がきれい。クサトベラとは繊毛があるかないかで見分けられるが、見た目では判らない。触ると判る。花や果実にクサトベラとの違いは見出せない。どれがどれの花で果実かは私には判別不能。花は白色で葉腋につき、群生する。開花期は4月から9月。果実も白色に熟し、よく目立つ。
 性質・用途はクサトベラと一緒。耐潮風性が強く、強剪定に耐えるので海浜地にある公園で、防風、防潮、防砂の低木生垣としてよく用いられている。陽光、排水良好な環境を好む。根元から多数分枝し、株立ち性となる。強剪定に耐えるので、生垣に向く。

 花

 実
 2008.11.22訂正加筆
 記:島乃ガジ丸 2005.6.8   ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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