テンノウメ
 もう5、6年も前になるか、勤めていた職場にアルバイトとして入ってきた青年が、若いのにも関わらず盆栽(年寄の趣味という私の偏見がある)を趣味としていた。ある日、彼の家を訪ねた際、盆栽のいくつかを見せて貰った。その中にヒレザンショウ(サンショウの仲間)に似たものがあったので「これ、サンショウ?」と訊いた。
 「テンノウメです。沖縄の盆栽木としては有名なんですよ」との答え。テンノウメとは面白い名前だ、天の梅と書くともその時教えて貰った。「天国の梅か、神様たちがその花を愛でているのであろう」と、名前と姿が記憶に残ってしまった。

 それから2、3年も経ってから、行きつけの散髪屋の庭にテンノウメが鉢物として置いてあるのに気付いた。で、大将に訊く。「テンノウメですよね?」
 「テンノウメ?・・・いや、確かテンバイって名前だ。」
 「テンバイ」って何だと頭を巡らし、転売の次に天梅がすぐに思いついた。
 「空の天、梅と書いてテンバイですね、正式にはそれをテンノウメと読むようです」と教えてあげた。特に調べたわけでもないのだが、たぶん、当たっているはずと思い、知ったかぶりがついつい口から出てしまった。いいのだ、テーゲーでも。間違っていたら訂正すればいいだけのこと。誰も傷はつかない。・・・後日調べると当たっていた。

 テンノウメ(天梅):盆栽
 バラ科の常緑低木 屋久島以南、南西諸島、台湾などに分布方 言名:インポーギー
 名前の由来は資料が無く不明。花は白色で梅の花に似ることからウメ(梅)は解るが、テン(天)が何を喩えているのかが解らない。別名にテンバイ、イソザンショウとある。テンバイは天梅を音読みしたもの、イソザンショウは葉や全体の姿がサンショウに似ていて海岸(磯)に生息することから来ていると思われる。ちなみにサンショウはミカン科の落葉低木で日本に産し、ヒレザンショウはミカン科の常緑低木で琉球列島に産す。
 匍匐するように枝を伸ばし蔓植物のように見える。枝の長さは30〜80センチ、よく分枝して灌木状となり、高さは20〜30センチ程度となる。海岸の岩の上に生える。
 白い梅のような花は径1センチほど、開花期は2月から6月。果実は球形で径6ミリほど、黒紫色に熟する。葉は照りがあり美しい。盆栽によく使われる。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2012.11.28  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
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 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
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