マルバシャリンバイ
 私がこれまで耳にした事があるシャリンバイは、マルバシャリンバイ、ホソバシャリンバイ、オキナワシャリンバイの3種だが、それらは、沖縄の植物を紹介している文献にもいずれかがどれかに掲載されている。しかしながら、ホソバシャリンバイはオキナワシャリンバイの別名としてある文献もあって、混同している。そもそもシャリンバイという名の種があるのかどうかも不明だったので、今回調べてみた。
 『寺崎日本植物図譜』によると、シャリンバイという基本種があって、その変種としてマルバ、ホソバ、オキナワなどがあるようだ。変種は他にもある。
 シャリンバイ Rhaphiolepis umbellata
 マルバシャリンバイ Rhaphiolepis umbellata var. integerrima
 ヒメシャリンバイ Rhaphiolepis umbellata var. minor
 ホソバシャリンバイ Rhaphiolepis umbellata var. liukiuensis
 その他、小笠原に分布するシマシャリンバイがあり、また、九州南部から琉球列島に分布するオキナワシャリンバイがあるとのこと。
 九州南部から琉球列島に分布するのはホソバシャリンバイも一緒で、ホソバシャリンバイは本島北部の山地にのみ自生、オキナワシャリンバイは低地に生息とある。
 ホソバシャリンバイは本島北部の山地にのみ自生ということなので、私の住む周辺には無いということだ。いつかお目にかかりたいが、ホソバシャリンバイとオキナワシャリンバイ、よく似ているということなので、素人の私には判別不能と思われる。
 ちなみに、念のためネットで調べてみると、シャリンバイの学名は
 Rhaphiolepis indica var. umbellataとなっていた。学問は進んでいるみたいだ。

 マルバシャリンバイ(丸葉車輪梅):生垣・添景
 バラ科の常緑低木 分布は東北南部から琉球列島 方言名:ティカチ
 名前の由来、枝の形が車輪のようになるからシャリン、花がウメに似ているからバイ、シャリンバイに比べ葉が丸っぽいからマルバで、丸葉車輪梅。
 オキナワシャリンバイの葉の縁は粗い鋸葉縁だが、本種の葉の縁は粗い鋸葉縁か全縁。葉の長さは4〜8センチで変わらないが、本種の方が幅広く丸っぽい。
 枝先に円錐花序を出して、数個の花をつける。花の直径は2センチほど、ウメに似た白い花。開花期、本土では4月から6月だが、沖縄では3月から4月。
 果実は、オキナワシャリンバイが熟すると黒褐色になるのに対し、本種は初め紫で、熟すると青黒色となる。結実期は9月から10月。
 自生地は海岸近くだが、庭木にも多く用いられる。高さは1〜3mほどになるが、刈り込んで生垣、玉作りなどにできる。ただし、萌芽力が弱いので強剪定は避ける。耐陰性があるので、高木の根元の装飾にも向く。公害に強いので街路樹にも適する。

 花

 実

 ホソバシャリンバイ(細葉車輪梅):生垣・添景
 バラ科の常緑低木 九州南部から琉球列島 方言名:ウーティカチャー、ティカチ
 名前の由来、シャリンバイはマルバシャリンバイに同じ。おそらく、マルバシャリンバイではなく基本種のシャリンバイに比べ、葉が細いのでホソバとつく。
 『寺崎日本植物図譜』に「ホソバシャリンバイは本島北部の山地にのみ自生、オキナワシャリンバイは低地に生息。」とあったので、私がこれまで家の近くの公園、民家の庭などで見てきた細い鋸葉縁のシャリンバイは、全てオキナワシャリンバイであり、本種はまだそれと知って見た事はないようだ。
 「山原の山地林内に自生」とは別の文献にもあった。その説明文を読み、写真を見た限り、オキナワシャリンバイとの違いがほとんど無い。「高さ3〜5m、葉は短い葉柄があり互生、長さ4〜8センチ、葉の縁は粗い鋸葉縁。」とのことでオキナワシャリンバイと同じ。果実が黒褐色なのも同じで、花の色形も同じ。ただ、花の「開花期は夏」だけが異なっていた。オキナワシャリンバイの開花期は3月から4月。
 別名モッコクモドキとあるが、確かにモッコクと似ている。モッコクはツバキ科。

 訂正加筆:2011.1.15 ガジ丸
 記:島乃ガジ丸 2009.3.24  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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