シマヒギリ
 名前にシマの付く物は沖縄に多くある。その際、シマは概ね「島」という意味である。島は「沖縄産の」という意味を含む。シマバナナ、シマゴメ、シマザケなどはそれぞれ、沖縄産バナナ、沖縄産米、沖縄産酒(具体的には泡盛のこと)を指す。
 シマゾーリは「島の草履」ということだが、これはたぶん「沖縄産の」ではなく、「田舎風の」という意味合いが強いと思う。沖縄に昔からある薄っぺらなゴム製のビーチサンダル風草履、私が子供の頃から一般庶民の履物であった。
 シマにはまた、同じく「島」という意味ではあるが、「劣ったもの」というニュアンスを含む場合もある。昔、泡盛はシマーと呼ばれていた、その頃の泡盛は臭くて、ウィスキーに口の慣らされたウチナーンチュは「劣ったもの」という意味で泡盛をシマーと呼んでいた。タバコについても同じで、沖縄産タバコはシマーと呼ばれていた。
 私自身若い頃は、感覚的にはシマーを蔑んでいた。飲み始めの酒はウィスキーで、それに比べると泡盛は不味い酒だった。吸い始めのタバコはアメリカ産で、県産タバコは不味いものであった。どちらも、「シマー」と呼んで、一段下げられていた。

 今回紹介するシマヒギリ、このシマという意味が不明であった。ヒギリに比べると艶やかさという点で一段落ちるので、シマと付いたのだろうか、不明。

 シマヒギリ(島緋桐):添景
 クマツヅラ科の常緑低木 東南アジア原産 方言名:なし
 キリ(桐)はゴマノハグサ科の落葉高木、沖縄には産しない。写真で見る限りでは、花は全然似ていなくて、葉が少し似ている。ヒ(緋)は花色から。で、ヒギリの説明はつくが、シマ(島)が不明。シマが付くと沖縄産という意味になることが多いが、本種はヒギリよりずっと後に入ってきたようで、方言名(ヒギリはチリントゥという)も無い。ヒギリより艶やかさに欠けるので、「田舎の」という意味があるかもしれない。
 別名リュウセンカ(竜船花)とあったが、イメージが湧かない。
 高さは1〜2mしかないが、葉は大きく長さ15〜20センチある。枝先に出る円錐形花序もまた大きく、これも長さ20センチほど。花弁は白色、花茎、がく片、雄しべが深紅色をしている。開花期は5月から9月。耐陰性はあるが、耐潮風性は弱い。
 ヒギリと似ているが、花序が大きく花弁が白であることが異なる。学名は、
 シマヒギリ Clerodendrum paniculatu
 ヒギリ Clerodendrum japonicum (Thunb.) Sweet

 花
 記:島乃ガジ丸 2009.6.25  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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