センリョウ
 大学生の頃、「百万長者になれたらいいですね」と言ったら、「アホかお前は、今時百万なんて屁みたいなもんだろ。億万長者だろ」とバイト先の店長に笑われてしまった。
 その数年前まで、ドルで日常生活を送っていた私は、「百万ドルということだ。百万ドルなら億を超えるだろう」と言いたかったのだが、「お前はアメリカ人か」とさらにバカにされそうだったので止めた。
 百万長者の百万は、日本で言えば確かに百万ドルということでは無いかもしれないが、しかしまた、百万円を指しているわけでも無い。ということは後日知った。広辞苑によると百万長者は、「非常に多くの富を有する人」で、百万そのものが「はなはだ数の多いこと」を意味しているとのこと。百万長者の百万は円でもドルでも無いというわけ。
 百万が、具体的な金額を指しているわけでは無いということを知ったが、例えば、百万が円でもドルでも無く、江戸時代の通貨である両ならどうだろうと考えた。百万両は、江戸初期の物価で現在の価値に換算すれば、約10億円になるとのことである。
 つまり、両なら千両で1億になる。千両で十分の価値があるということだ。で、その千両、広辞苑によれば「価値の非常に高いこと」となっている。また、千両役者なんて言葉もある。「1年に千両もの給金をとる役者の意」(広辞苑)ということだ。今なら、億単位の金を稼ぐ役者ということであろう。

 植物のセンリョウもおそらく「価値の非常に高いこと」に喩えたものであろう。センリョウという植物の値段が高いということでは無く。赤い実が見た目に鮮やかで、値千金の価値があるということなのであろう。ちなみに千金は「千両」のことも指す。

 センリョウ(千両):添景・鉢物・切花
 センリョウ科の常緑小低木 関東以南、南西諸島、他 方言名:ハナバナ
 名前はおそらくおめでたい名前。赤い実が縁起の良いものとして金千両の価値があるということなのであろうと思われる。マンリョウの10分の1の価値ということでは無く、1両の1000倍の価値があるということ。千両は「価値の非常に高いこと」(広辞苑)の喩えとしての意味もある。センリョウという名前が先で、マンリョウはセンリョウに似ていて、大きめであるところから、後から名付けられたのであろう。
 高さは50〜100センチほど。山地に自生する。夏に小さな花を穂状につけるが、それは目立たない。果実は球形で紅色に熟す。これに観賞価値がある。
 種子は食用となる。正月用の生花としてよく見る。実の黄色い品種もあるとのこと。クササンゴという別名もある。

 実
 記:島乃ガジ丸 2006.12.19  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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