オオムラサキシキブ
 去年の夏まで1階の住人だったUさんは、小池栄子等が所属するイエローキャブの(もう少し若ければ)タレントにしてもいいくらいの容姿の持ち主であったが、私とは何事も無く、デート一つすることも無く去って行った。夏のある日、挨拶に来て
 「越すことになりました。」と言う。私が驚いた顔をすると
 「結婚するんじゃないんですよ。実家に帰るんです。」と続けた。
 その後数分間、彼女の実家のこと、彼女の後に入る彼女の友人のことなどを話したのだが、ちょっと気になっていたこと、私が彼女をデートに誘わなかった理由の一つでもあったが、「あの恋人とはどうなったの?」ということを訊きそびれた。
 数年前に彼女がやってきて暫く経った頃、一人の男が時々彼女を訪ねてきた。男は土日の昼間、彼女が不在(仕事中)であった時もやってきては、畑仕事をしている私の傍をわざわざ(彼女の部屋から畑は遠回りになる)通って、私を一瞥して帰る。「俺の女に手を出すんじゃないぞ」と釘を差していたのだろうか。私は人の幸せを妬んで、壊すほど心貧しくは無い。やんわりと微笑んで彼を見送った。しかし、今から思えば、彼女と彼が二人でいるところを見ていない。ひょっとしたらあの男、ただのストーカーだったのか。

 ある日、1階の庭の掃除をしながらUさんと立ち話をしている時に、
 「私、このムラサキシキブは好きです。」と彼女が言う。ムラサキシキブを知らなかった私は彼女の目の先を追う。ムラサキと言うからには紫色の花か実がついているのだろうと見当をつけて見ると、そこに紫色の実があった。ムラサキシキブは、隣のニンニクカズラの伸ばし放題にしている蔓枝に覆われて、ほとんど目立っていなかった。
 その日、早速ニンニクカズラを剪定する。肩まで伸びた髪を角刈りにするくらいにバサっと切った。オオムラサキシキブ(今回調べて判ったことだが、それはムラサキシキブではなく、オオムラサキシキブであった)の姿がきれいに現れた。それからは毎年、オオムラサキシキブの紫の実は、私にも愛でられている。

 オオムラサキシキブ(大紫式部):添景・庭木
 クマツヅラ科の落葉低木 分布は本州南西部以南 方言名:ミミンガ、サルヌマタ
 文献にはムラサキシキブの変種とある。沖縄にはこの種の他にホウライムラサキ、オオシマムラサキなどがある。5月から8月頃に淡紫色の小さな花をたくさんつけるが、花よりも紫色の実の方が、観賞の価値のあるものとされている。結実期は10月から2月。
 放っておけば高さ3〜5mほどまでになる。特に剪定しなくても形が整う木ではあるが、高くなると細く伸びた枝が垂れ下がる。低木として用いる場合は適宜剪定する。

 実の群れ

 花1

 花2

 ちなみに、ムラサキシキブ
 紫式部 クマツヅラ科の落葉低木 方言名:なし
 分布は九州まで。実は10月から11月に美しい紫色に熟す。

 写真追加2005.10.21
 記:2005.1.9 島乃ガジ丸  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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