オオバナカリッサ
 8月のある日、銀行から5万円をおろすためだけに父に呼ばれた私は、「たったそれだけのために俺を呼んだのか!」と憤然し、その用を済ませた後はチルダイ(気が抜ける様を表したウチナーグチ)してしまった。「何か元気を取り戻すことをやらなくちゃ」と、実家から桜坂劇場へ向かう。しかし、観たいと思うような映画はやっていない。で、映画館の前にあるベンチに座って、一服しながら考える。閃いた。「奥武山公園へ行こう。行って、散策しよう。何かの花が咲いているかもしれない。」と。
 当てはあった。奥武山公園にはオオバナカリッサがある。その場所も知っている。前に訪れた時は花の時期ではなく、花の咲く頃に再訪しようと思っていたのだ。
 オオバナカリッサは夏の花と記憶(後で調べたら開花期は4月から7月)していた。その場所へ向かう。が、その場所が無い。奥武山公園は大規模改装中で、オオバナカリッサのあった場所は改装済みとなっていて、芝生の広場になっていた。
 父のしょうもない用事にチルダイし、映画館でもチルダイし、ここでもまたチルダイする。が、奥武山公園は広い。歩き回って、他の、まだ写真に撮っていない花の写真、植物の写真を何枚か撮ることができた。お陰で、元気を取り戻すことができた。

 それから1週間後、3時休みに、たまたま職場の裏通りを歩いた。裏通りは高い壁の向こう側なので滅多に行かない。数年ぶりのこと。そしたら、そこの民家の庭に、偶然にもオオバナカリッサがあった。「神の引き合わせだ」と思った。
 オオバナカリッサの開花期は上述のように4月から7月と文献にあったが、そこのオオバナカリッサは、9月になってもたくさんの花を咲かせていた。

 オオバナカリッサ(大花carrisa):添景
 キョウチクトウ科の常緑低木 南アフリカ原産 方言名:なし
 カリッサは学名の属名(carrisa)から、花が大きいのでオオバナと付く。
 高さは、沖縄では1〜3m程度だが、原産地では6mほどにもなるとのこと。分枝が多く、枝は横に広がる。葉の量も多く、全体にこんもりとした樹形となる。
 花は枝先に数個ずつ付き、白色で芳香がある。花弁は細く、クチナシの花を五弁にしたような形、開花期は4月から7月。
 排水良好な土壌で、陽光地を好み、乾燥に強い。果実は径3〜4センチの球形で、熟すと赤くなり、生食できる。枝に棘がある。学名はCarrisa grandiflora A. DC.

 花
 記:島乃ガジ丸 2009.9.5  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
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