ノボタン
 シコンノボタンは外来種であり、その名をノボタンから頂いているが、今やノボタンといえばシコンノボタンの方を指すほどにあちこちの庭で多く見られる。ただし、シコンノボタンはノボタンの園芸品種では無く、ブラジル原産の独立した種。ノボタンとは属が違う。名前だけをノボタンから貰っているようだ。
 私の散歩道や近所の庭などでもシコンノボタンが多い。ノボタンは見たことが無い。お陰でガジ丸は、本家ノボタンの写真がまだ撮れないでいる。
 野のつかないボタン、美人の座った姿に喩えられる大きな美しい花は、沖縄ではほとんど見かけない。生育環境が適さないのだろう。ボタンの花を知らないウチナーンチュは多いはず。私はしかし、毎年春から初夏にかけて倭国へ旅をすることが多く、その際、牡丹祭りに出くわすことがよくあり、よく見ていて、よく知っている。

 以上、2005年11月に書いて、その1年後に近くの園芸店で鉢物のノボタンの写真を撮る。今年になって脱サラ農夫、友人Tの店でノボタンの園芸品種の写真を撮り、宜野湾市の民家の庭で、これも園芸品種らしい鉢植えのノボタンを見つける。しかし、私の日常の活動範囲内である宜野湾市以南で、地植えのノボタンは未発見であった。
 先日、友人のHに誘われてヤンバル(沖縄島中北部の通称)の源河川へ出かけた。そこで、念願の野生ノボタンに出合った。ノボタンは酸性土壌を好むとのこと、で、酸性土壌のヤンバルには多いが、アルカリ土壌である沖縄島南部では見かけない。
 ヤンバルの自生のノボタン、多くあったが、開花期は過ぎたものと勘違いして、よく探さなかったので、残念ながら開いた花の写真は撮っていない。

 ノボタン(野牡丹):添景・鉢物
 ノボタン科の常緑低木 奄美以南の南西諸島、台湾、他に分布 方言名:テーニーなど
 野に咲く(野生の)ボタンだからノボタンなのかと思ったら、ボタンとは科が違う。ボタンはボタン科、ノボタンはノボタン科。科が違ってもどこかが似ているのだろうと写真を見比べる。葉の形状は大きく違う。花も似ていない。
 酸性土壌を好むため沖縄島北部(通称ヤンバル)に多く、私の住む那覇近辺ではほとんど見ない。園芸店や、鉢物として民家の庭にあるのを見かけるのみ。それでも、ウチナーンチュにとっては馴染み深いようで、方言名はテーニーの他、ミーハンチャ、ハンケータブ、オーバンキ、ハンコーギー、ハンキタブなど多くある。
 ボタンは寒冷地を好むが、本種は温暖な気候を好む。したがって、ボタンは沖縄に自生しないが、ノボタンは沖縄に自生し、奄美大島が分布の北限となっている。
 高さは1〜2mで株立ち性。酸性土壌、陽光地を好み、徒長しやすく、枝や葉に硬い毛がある、などの特徴がある。ボタンに比べると花は小さく、見た目も質素だが、紫紅色、または桃色の花はきれい。開花期は7月から11月。紫色に熟した果実は食べられる。

 花

 園芸種

 ちなみに、
 ボタン(牡丹):添景・鉢物
 ボタン科の落葉低木 中国原産
 「中国で花王と称する」と広辞苑にある。確かに、その名にふさわしい花の大きさ、派手さ、風格を持っている。花色はいろいろ、一重、二重、八重など形状もいろいろ。ボタンは元々中国北東部の原産らしく、温暖な地方よりも寒冷な地域を好むようで、少なくとも私は、沖縄でボタンを見たことがない。ボタンに近いシャクヤクもない。

 東京のボタン
 記:島乃ガジ丸 2009.8.23  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
inserted by FC2 system