コンロンカ
 第二次世界大戦に負けて、日本国にも主権在民の考えが浸透した。そのお陰で、それまでは威張っていた警官も市民に対しては丁寧な応対となった。市民に対し、「おいっ」なんていう呼びかけをするおまわりさんは、少なくとも建前上はいない。
 学生の頃、東京暮らしで出会ったおまわりさんは皆、丁寧な人たちであった。こっちが学生であると判っても言葉は敬語であった。あんまり丁寧なので、日本のはるか南端、沖縄から出てきた田舎者の青年は、「何だ、どういうことだ」と戸惑うのであった。
 その頃、沖縄の警官は戦前の警官とあんまり変わらない態度の人も多くて、高校生の頃、浪人生の頃、学生の頃で沖縄に帰省した時などに、「おいっ」という呼びかけをおまわりさんにされたことが何回かある。沖縄のおまわりさんは敬語を使わなかった、あるいは、使えなかったようだ。日本語は大丈夫か?と疑うような、ウチナーグチ(沖縄口)で何やらまくしたてるようなおまわりさんもいた。
 そのようなおまわりさんは、本土復帰から30年も経った今ではもういないにちがいない。今は、近所を巡回するおまわりさんも敬語で話しかけてくる。近くにある石嶺交番のおまわりさんも、過去2回ほど所用があって訪ねたが、応対はすごく丁寧であった。それはもちろん、私が彼らより概ね年上であるということも要因となっていようが。

 石嶺交番は私の通勤路にあり、散歩の際もたまにその前を通る。ヤンバル(沖縄本島北部の通称)でキャンプした時によく見かける植物が、石嶺交番の花壇にあるのを先日、見つけた。面白い木なんだが、ヤンバルにありふれているせいか緑化樹としてはあまり見かけない。『新緑化樹木のしおり』や『沖縄の都市緑化植物図鑑』にも記載が無い。

 コンロンカ(崑崙花):添景
 アカネ科の常緑低木 原産分布は南西諸島、台湾、他 方言名:キーカンダ
 『沖縄植物野外活用図鑑』に名前の由来として、「白色のがく片を崑崙山の雪に見立てて名づけたものとされている」とある。崑崙を広辞苑でひくと「中国古代に西方にあると想像された高山」とあったので、想像の崑崙山は雪を頂いているのかと一瞬思う。が、もう一つ「チベットと新疆ウイグル自治区の境を東西に走る大山系」のことも崑崙というらしい。で、判った。それはコンロン山脈のことだ。チベット高原の北側にある山脈だ。コンロン山脈は7千メートル級の山の連なり、山頂は当然、雪に覆われている。
 半陰となる湿潤地を好み、そういった環境の山野に自生している。ヤンバル(沖縄本島北部の通称)に行くと、山に入らずとも平地の草地などでも見かける。半陰を好むが陽光地でもよく生育し、写真のコンロンカはよく日の当たる花壇にあった。
 枝先に黄色の小さな花に多数つける。花よりも葉の形をした1枚のがく片が白くて大きく、目立つ。緑の葉、黄色の花と対比されてきれい。開花期は主に6月から9月。

 花
 記:島乃ガジ丸 2005.9.4  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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