キダチアサガオ
 「きだち」を広辞苑で引くと、「こだち」とある。「こだち」を広辞苑で引くと、「木のむらがり生い立ったもの」とある。「木立のざわめく音に目が覚めた」などと使う場合の「こだち」だ。これはしかし、私がイメージする「きだち」では無い。
 既に紹介済みのキダチイヌホオズキ、キダチコミカンソウ、キダチハマグルマ等の他、キダチアロエ、キダチベゴニアなどの「きだち」が私のイメージする「きだち」。「(草のようでは無く)木のように立つ」ということ。そのイメージからすれば、今回紹介するキダチアサガオはまさしくその通り、ぴったしキンコンカンとなる。他のものに絡みつかなければ自立できないあのアサガオが、木のように立っているのだ。
 もっとも、両者は同じヒルガオ科でも属が違う。アサガオはIpomoea(サツマイモ)属では無く、学名はPharbitis nil Choicyとなっている。そして、本種はIpomoea(サツマイモ)属で、その学名はIpomoea crssicaulis。

 余談だが、「こだち」というと私は、木立では無く、小太刀の方を先にイメージする。確か、映画『たそがれ清兵衛』の主人公は小太刀の使い手ではなかったか。山田洋二監督の時代劇三部作は全部観たが、一番最初の『たそがれ清兵衛』が最も傑作だった。三部作の最後を飾った『武士の一分』も良い映画ではあったが、最も不出来だったと私は感じている。もしかしたら、監督もそう感じていて、4番目の時代劇があるかもしれない。

 キダチアサガオ(木立朝顔):添景
 ヒルガオ科の落葉低木 ブラジル原産 方言名:なし
 Ipomoea(サツマイモ)属には珍しい木立性で、花の形が朝顔に似ているので、キダチアサガオ(木立朝顔)という名前。判りやすい。
 高さは1〜2メートル。文献には潅木とあったが、分枝が少ないので、刈り込んで生垣とかには使いにくい。で、ここでは添景の中木扱いとした。花は淡紅色で朝顔のような鐘型。開花期は4月から10月。幹枝には乳白色の汁液があり、有毒とのこと。
 職場のキダチアサガオにはホウズキカメムシが群れている。ホウズキカメムシはホオズキを寄主にするところからその名があるが、本種もどうやらホウズキカメムシの好物であるみたいである。人間には毒となる汁も彼らには美味しいのだろう。
 記:島乃ガジ丸 2007.2.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
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