ジュラン
 石嶺図書館から借りた『沖縄植物野外活用図鑑』の第8巻をパラパラと捲っていると、ジュランという名前の植物が目についた。正確に言うと、写真や説明文にでは無く、その名前が目についた。生来下品である私は、その名前を見て、女乱を連想し、女が乱れる様を妄想してしまった。で、ジュラン、名前はしっかり記憶に残った。
 それから1年余りが経った今年の6月、職場に新顔の樹木があることに気付いた。てっきりゲッキツの類であろうと思っていた小さな木が、ごく小さな黄色の花をいっぱいつけていたのだ。「ゲッキツじゃなかったんだ。」と判ったが、さて、君は誰?
 同僚の、植物に詳しいSさんに訊く。「ジュランだ。」とのこと。
 「おー、君が女乱であったか!何ともまあ、名前に似合わず清楚なことよ。」と一瞬思ったのだが、名前はジョランでは無い。ジュランだ。
 数日後、石嶺図書館へ行って、『沖縄植物野外活用図鑑』の第8巻を再び借りて、ジュランの説明文を読む。花に芳香があるとのこと。念のため、ネットで調べると、花に芳香がある木だから樹蘭という名前らしい。
 で、その数日後、職場で、ほぼ満開になったと思われるジュランの花に鼻を近付ける。ところがそれは、蘭の匂いでは無く、ミカンのような匂いがした。それでも、良い香りには間違いない。むしろ、蘭よりずっと爽やかだ。私は、濃い匂いよりもこういった爽やか系の匂いが好きである。ジュランから女乱を連想するくせに・・・だ。

 ジュラン(樹蘭):添景・生垣
 センダン科の常緑低木 南中国〜インドシナ原産 方言名:ムラン
 ラン(蘭)は概ね良い香りがする。本種は花に(ランに似た)芳香を持つ樹木である、ということからジュラン(樹蘭)と名前が付いたと思われる。別名をコメラン(米蘭)というが、これは、花が米粒のように小さいことから。確かに小さい。
 ランの匂いと言えばカトレアをすぐ思い浮かべる。ジュランの花はしかし、ミカンの匂いだ。「オレンジ味のガムの匂い」と表現したら、同僚のKさんも納得した。
 四季咲き性で、年に数回開花するとのこと。枝先の葉脇から5〜8センチほどの小さな花序を出し、それにごく小さな花が多数つく。花色は明るい黄色。
 幹は直立して根元から多数分枝する。小さな枝が多数つき、それに小さな葉を多数つけて、多数の花序が葉脇から出る。花1個はごく小さいが、多数×多数×多数ということになって、黄色が樹冠を飾る。辺りに良い香りが漂う。
 高さは3〜4mほどになる。葉も長さ2センチほどと小さいが、密につけるので、全体にこんもりとした形になる。庭の添景や生垣として使える。鉢物としても出回る。

 花
 記:島乃ガジ丸 2008.7.16  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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