フヨウ
 琉球民謡に『戻り駕籠(ムドゥイカグと発音する)』という歌がある。雑踊りに向くテンポのいい曲。古い歌で、何度も耳にする機会があり、メロディーだけなら私も口ずさむことができる。歌詞ははっきり覚えていない。今、手元に資料も無い。が、確か、
 駕籠に乗したるチライナグ(美ら女) ウヌ齢(その齢)春ヌ若みどり(春の若葉)
で始まったと思う。その後の記憶があやふやで、はっきりしないが、最後は、
 昔ヌ楊貴妃 クリガヤラ(昔の楊貴妃はこれのことではないか)
となって一番が終わる。その間のあやふやなところに、美人を喩える意味でフヨウの花が出てきたのではなかったか。この歌のお陰で、私はフヨウの花が美人の喩えになることを知った。シャクヤクやボタン、ユリも美人の例えになることを知ったはその後だ。
 『戻り駕籠』は、元は小歌劇の題名で、『沖縄大百科事典』に記載がある。「駕籠担ぎの雲助二人が、駕籠に乗せた女の品定めで喧嘩になる。頬被りをしたままの女が仲裁し、その場は収まるが、女が頬被りを取ると、大変な醜女だったため二人は慌てふためく」といった内容らしい。民謡の『戻り駕籠』は、最後は3人で仲良く遊ぶといった内容。

 フヨウの花は、その大きさは派手だが、その白い色は清楚な感じがする。少女のような純真な心を持ったグラマーな女性ということであろうか。そんな女に会ってみたい。

 フヨウ(芙蓉):添景・花木
 アオイ科の落葉低木 中国原産、本州~九州に分布 方言名:フユウ
 名前の由来は資料が無く不明。漢字表記の芙蓉は広辞苑にあって、中国原産ということ
もあり、おそらく漢名。方言名のフユウはフヨウの沖縄読み。
 『ネイチャーガイド 琉球の樹木』に、「琉球では植栽されるが野生化は見かけない」
とあり、分布についても「本州~九州」とあった。街路樹などでは見かける。
 フヨウとサキシマフヨウの違いについても同書に詳しくあった。「フヨウはサキシマフ
ヨウより葉が大きく、裂片の先が尖り、各部に腺毛が多い」とのこと。「葉が大きく、裂
片の先が尖り」という点から私の写真のものをフヨウと判断した。
 広辞苑に「高さ1~2m」とあるが、『ネイチャーガイド 琉球の樹木』によると1~
3m。写真のフヨウは街路樹であるが、高さは3m前後あった。
 ヒビスクス属の花はたいてい朝に咲いて夕方には萎む1日花であるがフヨウも同じ。花
色は概ね白色~桃色だが、さまざまな園芸品種があるとのこと。開花期は夏~秋とあり、
私の写真は11月、園芸品種によって開花期も多少のずれがあるかもしれない。

 花

 訂正追記:2018.05
 記:島乃ガジ丸 2005.11.20  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『ネイチャーガイド 琉球の樹木』大川智史・林将之著、株式会社文一総合出版発行
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