ヒロハザミア
 年相応(もしかしたらそれ以上かも)に記憶力の衰えている私なので、自分で撮った写真の、植物でも動物でも、それが半年程度以内のものであれば何とか覚えているが、それ以上経ってしまうともうどこで撮ったのか、ほとんど覚えていない。
 ところが今回紹介するヒロハザミアは、写真を取ったのは2011年の7月で2年以上過ぎているが、写真を見てすぐに思い出した。女一人庭師のT女子のお供で読谷村の「やちむん(焼き物という意)の里」へ行った時だ。
 「美女と一緒だったから印象に深い」というわけではなく、彼女と訪ねた窯元の主Aさんが記憶に強く残っているからだ。Aさんは70代の爺様、シーサー(獅子のこと)作りで現代の名工となったその世界では有名な人。ただし、現代の名工であることも、その世界では有名な人であることも、その日会うまで私は知らなかった。
 「Aさんが現代の名工で有名人だから印象に深い」というわけでもない。じつは、Aさんと話をしていて、彼の娘が私の高校の時の同級生だと判った。その娘に恋をしていたわけではないし、友人付合いしていたわけでもない。高校の頃私は陶芸をやっていて、それに使う土を彼女に頼んで彼女の家(陶芸工房、学校の近くにあった)から譲ってもらっていたのだ。その頃はきっとAさんもそこで仕事をしていたに違いない。

 その日、Aさんは庭のテーブルベンチに私たちを案内し、飲み物やお菓子を出して、しばらくユンタク(おしゃべり)してくれた。庭の一角にソテツのような葉の出し方をしている庭木を私は見つけ、写真に撮った。高校の頃、自分が使う土を買った陶芸工房の主、その主の現在の庭にあるヒロハザミア、というわけで印象に深い。

 ヒロハザミア(広葉zamia):添景・鉢物
 ソテツ科の常緑低木 北米南部、西インド諸島原産 方言名:不詳
 名前の由来、ザミアは学名の属名。ザミア属は「新大陸固有の一属で約40種ある」と広辞苑にあり、本種はその中でも小葉の幅が比較的広いことからヒロハ(広葉)とついたものと思われる。別名をザミアプミラというが、プミラは学名の種名。
 幹は塊茎状で40センチほどになるが、その三分の二以上が地中で、地上へは残りの10センチ内外が出ているとのこと。葉は羽状複葉で太い葉柄を持ち、革質で堅く、長さ60〜120センチになり、幹頂に叢生する。全体にソテツに似ているが、小葉はソテツより幅が広い。成長は遅く、寒さにも乾燥にも強いので観葉植物の鉢物に向く。
 広辞苑に「ソテツ同様、種子植物でありながら精子をもつ」とあったが、勉強不足の私には「ソテツに精子?何のこと?」なので、これは今後の勉強課題とする。
 記:島乃ガジ丸 2013.11.23  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
 『藤田智の野菜づくり大全』藤田智監修、NHK出版編
 『やんばる樹木観察図鑑』與那原正勝著、ぱる3企画発行
 『熱帯の果実』小島裕著、新星図書出版発行
 『熱帯花木と観葉植物図鑑』(社)日本インドアグリーン協会編、株式会社誠久堂発行
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