ヒレザンショウ
 学生の頃、だから、もう25年ほども前のこと、鳥取空港から羽田空港へ向かう飛行機の、トイレの一室を独占したことがある。前夜、下関で食った生牡蠣が、どうやら中(あた)って、飛行機に乗る時間の午後過ぎから下痢となってしまったのであった。
 以来、生牡蠣はしばらく食えなかった。生牡蠣はそうであったが、私はカキフライが大好物で、カキフライの他、カキ鍋、バターソテーなど火を通したものは普通に食っていた。生牡蠣が食えるようになったのは、中ってから4、5年も経ってからのこと。

 浪人生の頃、母が料理したウナギに中(あた)った。生牡蠣の時もひどかったが、ウナギに中った時の症状はそれまで経験したことの無い・・・だけでなく、それ以後、今日まで経験したことも無いひどい中り具合だった。上からモドす、下からクダす。熱は出るは、寒気はするはで、回復するのに1週間はかかったと覚えている。
 以来、ウナギはしばらく食えなかった。特に蒲焼がまったく食えなかった。食えるようになったのは、中(あた)ってから4、5年も経ってからのこと。しかしそれも、一切れほどなら食って食えないことは無いといった状態。それから四半世紀経った今でも、ウナギの蒲焼は、うな重の2切れある中の、その1切れの半分でギブアップとなる。
 ウナギの蒲焼は見た目が美味しそうなので、食い意地の張っている私はついつい手を伸ばしてしまうのだが、それを鼻に近づけたとたん昔が蘇る。その匂いがいけないようだ。匂いの元は、ウナギそのものでなく、醤油でも砂糖でもない。ウナギを焼いたときのウナギの脂の匂いと、そのウナギに振り掛けられたサンショウの匂いだ。それらが混ざり合って私の鼻を突く。蒸しただけのウナギは割りと平気である。旨いとは思わないが。

 母が作ったウナギにサンショウはかかっていなかったと思うが、実際、私が中ったのはサンショウでは無く、ウナギの脂であったのだが、サンショウだけでもその匂いを嗅ぐとウナギの脂の匂いを思い出す。サンショウに罪は無いが、あまり好きでは無い。
 沖縄にサンショウは無いと思う。どの文献にも記載が無いし、沖縄産のサンショウがスーパーに並んでいるのも見たことが無い。でも、その親戚のヒレザンショウはある。

 ヒレザンショウ(鰭山椒):添景・生垣・盆栽
 ミカン科の常緑低木。原産分布は小笠原、琉球列島。方言名:センスルギー
 別名イワザンショウ(岩山椒)といい、海岸沿いのサンゴ石灰岩地帯に自生する。葉柄に翼があるので、ヒレのある山椒という名。
 羽状複葉の葉は光沢があり、きれい。高さは1mほど。枝の分岐が多く、強い刈込みに耐えるので玉作りや生垣に向く。陽光がよく当り、排水良好な環境を好む。
 自生地がそうなので、潮風に強い。乾燥にも強い。病害にも強い。実も葉も山椒の代用品となり、香辛料として使われる。ついでに、その山椒。
 サンショウ(山椒)
 ミカン科の落葉低木。日本、中国、朝鮮に分布。
 高さ3メートルほどなる。若芽は刺身のツマに出てくる「木の芽」となり、果実はウナギの蒲焼には欠かせない香味料となる。健胃薬でもあるらしい。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2005.7.31  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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