ヒイラギトラノオ
 金曜日の職場がオープンした頃に、店の前に飾る鉢物をいくつか準備した。ベンジャミン、ポトス、アレカヤシ、ノリナ、パキラなど園芸店でよく見かける有名どころの観葉植物がほとんどであったが、珍し物好きの店主である従姉のために一つ、園芸店でも公園や民家の庭でもあまり見かけない植物を探してきた。それは、前の職場の庭にあったもので、かわいい花が咲くのを知っており、そこの社長に頼んで譲ってもらった。
 その植物の名を私は知らなかった。社長に訊くと、
 「確か、ヒイラギトラノオだっとと思う。」との答えだった。トラノオと聞いて、観葉植物として有名なサンセベリアを思い浮かべた私は、
 「トラノオって、確かですか?」と社長を疑った。そんな私に気を悪くすること無く、
 「確認してみましょう」と社長は言い、後日、「間違いない」との電話を貰った。
 その後、私も自分で調べてみる。キントラノオ科という科があることを知り、キントラノオという名の植物があることを知り、ビタミンCが豊富に含まれていることで有名なアセローラもキントラノオ科であることなどを知った。

 鉢物に水をやる場合は、頻繁にやっては水腐れする。鉢の大きさにもよるが、鉢の土の表面が乾いてから、あるいは、それから1、2日経ってから水をやる。そして、水をやる場合はたっぷりやる。鉢底から水が流れ出るくらいたっぷりとやる。そうしないと、水を吸収する能力を持った髭根まで水が届かないからだ。髭根は概ね鉢の下方にある。
 金曜日の職場にあるヒイラギトラノオは今枯れかかっている。金曜日しか行かない私は水遣りをできないので、2階の喫茶店の店長に頼んでいる。面倒臭がり屋の店長は、鉢の表面が濡れる程度しか水をやらなかったようなのだ。お陰で、既にベンジャミン、アレカヤシ、ゲッキツは枯れてしまった。ヒイラギトラノオはまだかろうじて生きている。

 ヒイラギトラノオ(柊虎の尾):添景・生垣
 キントラノオ科の常緑低木 原産分布は西インド諸島 方言名:なし
 トラノオと名がつくが、トラノオ(チトセラン)の仲間では無い。ヒイラギとも名にあるが、ヒイラギの仲間でも無い。チトセランはリュウゼツラン科多年生草本、ヒイラギ(柊)はモクセイ科の常緑中木。ヒイラギに似た葉のキントラノオ科の植物ということ。
 英語ではDwarf hollyというらしい。Dwarfは「小人」という意味もあるが、植物に用いると「矮性の」という形容詞にもなる。Hollyはセイヨウヒイラギのこと。セイヨウヒイラギの枝はクリスマスの飾りに使われるが、もちろん、ホーリーナイトのホーリーはこのhollyでは無く、神聖なという意味のholyとなる。英語の勉強になった。
 花は、同じキントラノオ科のアセローラの花にそっくり。学名を調べるとアセローラとは同属(マルピギア属)であった。葉の形状が違い、全体の大きさも違うが、枝ぶりもまたアセローラに似ている。薄桃色のかわいらしい花、開花期は7月から10月。

 花
 記:島乃ガジ丸 2005.9.4  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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