ハマボウ
 10年ほど前まではよくキャンプに行っていた。キャンプ地は主にヤンバル(山原と書く、沖縄島中北部の通称)の海端。砂浜にテントを張る。
 海端なのは、キャンプ仲間にダイビングをする者が多くいたという理由もあるが、キャンプ仲間には女性や子供も多くいて、人気(ひとけ)の無い山よりは車の走る道路が近くにあり、民家も多くある海の方が安心できるという理由もあった。
 しかし私は、ダイビングの趣味は無く、泳ぐのも好きではなかったので、皆が海で遊んでいる間はたいてい海岸端や近くの山へ散策に出かけていた。
 その頃の写真はたくさんある。当時私はバカチョンのフィルムカメラを持っていて、キャンプのたびに写している。撮影対象のほとんどは仲間たち人間。ヤンバルへ行く機会のほとんど無い今となってはつくづく残念に思う。仲間たちの写真が残念というわけではない。当時から私が植物や動物に興味を持っていたならば、自然豊かなヤンバルでたくさんの動植物の写真が撮れただろうに、と残念なのである。

 今回紹介するハマボウはしかし、ヤンバルでも見ることはできなかったかもしれない。自生地が奄美までとなっている。沖縄には自生しないハマボウだが、私は那覇市の民家の庭にあることを数年前から知っていた。先日(5月中旬)、花を咲かせていた。

 ハマボウ(黄槿):添景
 アオイ科の落葉低木 三浦半島以南〜九州に分布 方言名:不詳
 ハマボウの名前の由来については資料が無く、不明。黄槿という字は広辞苑にあった。これは分かりやすい。黄色いムクゲ(槿)ということ。ムクゲとは同属。
 分枝が多く、横に広がる。自生地は海岸で、耐潮風性が強い。広辞苑に、高さ「2メートル余」、『野外ハンドブック・樹木』に「高さ1〜2m」とあったが、私が見たものは3mほどあった。枝張りは3m以上あった。沖縄では育ちが良いのか、あるいは、海岸から離れた場所がぬるま湯のような環境となったのか、不明。
 沖縄の環境が適しているのかどうか、実は、『野外ハンドブック・樹木』に、分布は九州までとあり、琉球列島は入っていない。『沖縄植物野外活用図鑑』には奄美大島までとあり、沖縄諸島以南は入っていない。私も沖縄の海岸で本種を見たことが無い。分布しないということは適地ではないということなのだが、その辺りのことも不明。
 葉は厚く艶があるが、表面に毛が密生していて全体に灰色っぽく見える。花はオオハマボウによく似ている。葉脇に付き、黄色で、中央部分が紅紫色となっている。五枚の花弁が回旋状に並んで開く。一日花。開花期は、『野外ハンドブック・樹木』に6〜7月とあるが、私が見たのは5月、『沖縄植物野外活用図鑑』には春から夏とあった。

 花
 記:島乃ガジ丸 2009.5.30  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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