ギョクシンカ
 キスしたくなる唇というものが世の中には存在すると思う。それはもちろん、個人の感性に依るものだと思うが、例えば、マリリン・モンローの唇などである。最近の若い女性タレントで言えば井上和香さん、あの厚い下唇を甘噛みしてみたい。
 ギョクシンカの花弁は薄い。でも、その形はきれいである。いかにも、玉唇花(玉のように麗しい唇)という名に相応しい。薄くてもきれいであれば、やはり軽く噛んでみたいとオジサンは思うのである。もちろん、触れるだけでも満足なんだが、オジサンは。
 ギョクシンカから玉唇花という字を思いつき、「玉のように麗しい唇」まで連想したのだが、それは、私の妄想である。実際には玉心花と書くようだ。色っぽくは無いが、きれいである。名付けた人は上品な人だったのだろう。私でなくて良かったのだ。
 初夏から夏、末吉公園を散歩していると、樹木の生い茂ったその根元辺りに、小さく可愛らしい、清楚な白い花が慎ましく咲いているのに気付く。それがギョクシンカ。末吉公園の、樹木の生い茂った根元辺りには赤い実も多い。それはナガミボチョウジ。

 以下、2013年8月、訂正加筆。
 ギョクシンカの方言名は不詳としてあったが、過日、南風原黄金森公園を散策したところ、ギョクシンカの樹木札があり、その中には方言名が多記されていた。それによると、ギョクシンカの方言名はクチナギヌウトゥ。残念ながらその由来までは書かれていなかったが、私の推測によると「クチナシの夫」ではないかと思う。
 本種は全体にクチナシに似ている。クチナシの方言名はカジマヤーとも言うが、そのままクチナシとも言う。ウトゥは夫のこと。で、クチナシの(ヌ)木(ギ)が詰まってクチナギヌウトゥとなる。本種の葉はクチナシの葉に比べると薄くて弱々しい感じがする。沖縄の夫はたいてい女房より弱々しい感じがする。太った女房に比べ痩せている。

 ギョクシンカ(玉心花):添景
 アカネ科の常緑低木 九州南部以南、南西諸島、台湾などに分布 方言名:不詳
 名前の由来は不明。文献に玉心花という字があった。玉は美しいという意味を持つ。美しい心を持った花ということになる。確かに清楚な感じはする。しかし、私なら玉唇花という字を充てたい。「うるわしいくちびる」(広辞苑)のような花となる。
 『沖縄植物野外活用図鑑』に「山地の樹下に見られる低木」とあって、その通り、末吉公園の原生林が林立する中を、下に目線を落としながら歩くと本種に出会う。
 高さは1〜3mほど。枝先に花序を出し、多数の花をつける。15ミリほどの星型をした白い花。開花期は5月から8月。果実は球形で、熟すと黒くなる。

 花
 記:島乃ガジ丸 2008.9.9  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
inserted by FC2 system