バンマツリ
 日曜日、買い物に出ようと車に乗り、エンジンをかけようとしたがかからない。セルが十分回らない。どうやらバッテリーが上がった(沖縄では電池が切れたことをこう言うが、標準語では何と言うのだろう)ようだ。前夜、家に着いたのは8時、ライトを消し忘れでもしたのかと思い、車は諦めて、買い物には歩いていく。
 駐車場を出ると、右手の家にはヤマモモ、マンゴー、アセロラが道に面してあり、左手の家にはオオバナサルスベリがあって、それぞれ枝を道路に張り出して木陰を作っていてくれる。その日はでも、太陽も落ちた薄暗い時間、木陰は関係ない。今回の発見は匂い。その緑のトンネルに一歩足を踏み入れた瞬間、甘い匂いが漂ってきた。
 匂いの元はバンマツリだった。左手の家の門前にバンマツリの木がポツンと1本ある。高さは1m弱。紫、薄紫、白とアナログ的に色を変化させた花をたくさん咲かせている。そんな状況は、昼間だとそれまで何度も目にはしている。が、花の匂いは、昼間は弱いので気付かない。日が暮れてから出かけるということが、この数ヶ月無かったものだから、バンマツリの匂いは新鮮に感じた。車のバッテリーが上がって少し落ち込んでいた心が、いっぺんに晴れた。こういうのも"塞翁が馬"と言うのだろう。

 バンマツリ(蕃茉莉):庭木
 ナス科の常緑低木。分布は中南米、西インド諸島。方言名:無し
 沖縄に入ってきているナス科バンマツリ属は3種。バンマツリ、ニオイバンマツリ、オオバンマツリ。このうち、庭でよく用いられるのはバンマツリとニオイバンマツリ、と言いつつ私には両者の違いがよく判らない。文献によると、花の大きさが、バンマツリは4〜5cm、ニオイバンマツリは3〜4cm、ニオイバンマツリの方がバンマツリより香りが少し強い、とある。庭での使い方は同じだと思われる。
 生垣にしたり、まとめて刈込みにしてもいいのだが、高くならず、自然樹形も良いので単独植えに向いている。花は日中よりも夜に香りを増す。花期は4〜9月とあるが、今も咲いている。
 英名が面白い、「Yesterday-today-and-tomorrow」、日を追って色が紫色から白色に変化するところからきているらしい。漢字の蕃茉莉、蕃はバンジロウでも述べたように外国の意、茉莉は茉莉花、マツリカのこと。マツリカはモクセイ科ジャスミン属の植物だが、良い匂いがするということで、外国からきたマツリカのように良い匂いのする植物という意味なんだろう。

 花
 記:2004.10.6 島乃ガジ丸  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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