ヤエヤマネコノチチ
 2008年の梅雨明けした頃、嘉数高台公園を散策している折、「おっ!」と思わず声が出るほどの美しい色模様をしたチョウを見つけた。「おっ!」と思わず声が出るほど美しいので、名前は思い出せなかったが、それが有名なチョウであることは記憶していた。写真を撮って、家に帰って調べる。沖縄県の天然記念物フタオチョウであった。
 図鑑には、フタオチョウの食草はクワノハエノキとヤエヤマネコノチチとあり、ということは嘉数高台公園にはそのどちらかがあるということになる。クワノハエノキはそれ以前に知っており、末吉公園にあることも知っている。が、ヤエヤマネコノチチは初めて見る名前、名前が面白くて会いたいと思った。八重山の猫の父、どんな姿だ?

 私が常時参考にしている文献では3冊にヤエヤマネコノチチが紹介されていた。それらの文献の説明を読み、写真もチュージューク(マジマジといった意のウチナーグチ)観て、嘉数高台公園を再訪したが、観察力の乏しい私には結局探せなかった。
 ただ、文献の説明からヤエヤマネコノチチは「八重山の猫の父」では無く、「八重山の猫の乳」であることが判った。「だよな」と納得。「猫の父」ではどんな姿なのか特定できない。猫の父も猫の母も猫の子も、見た目区別が難しい、父の特徴は何だ?となる。その点、「猫の乳」はその姿がほぼ特定できる。特定というか、私は容易に想像できる。猫の乳をチュージューク観たことは無いが、たぶんこんなだろうなぁ、と。

 ヤエヤマネコノチチに会えたのは海洋博公園、名札が付いていたのでそれと判った。特に特徴のある木では無い(と私には見えた)ので、この先どこかで会ったとしても気付かないはず。もしも気付けば、「やー猫の乳さん」と挨拶してやろう。

 ヤエヤマネコノチチ(八重山猫乳):公園
 クロウメモドキ科の落葉中木 奄美諸島以南の琉球列島に分布 方言名:ヤマクワー
 名前の由来は『沖縄大百科事典』に「果実の形が猫の乳首に似ていることに由来する」とあった。『琉球弧野山の花』にも同様にあったので間違い無いだろう。分布は奄美諸島以南の琉球列島とあり、学術的発見が八重山だったのでヤエヤマ(八重山)か、琉球列島の代表として「八重山にするか」と適当にヤエヤマとと付いたのか、これは不詳。
 本種は琉球列島の固有変種。分布地が文献に詳しくあり、奄美諸島、沖縄諸島、宮古、八重山で、基本種ネコノチチは本州(岐阜県以西)〜九州に分布するとのこと。
 葉腋から花序を出し花を集散状につける。花は黄緑色で小さく目立たない。実は長楕円形で光沢があり、初め黄赤色に熟し、後に黒く熟す。
 高さは10mていどで低地〜山地の林縁などに生える。石灰岩地に多いとのこと。沖縄県の天然記念物フタオチョウの、幼虫の食草となっている。

 葉
 記:島乃ガジ丸 2013.8.17  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
 『藤田智の野菜づくり大全』藤田智監修、NHK出版編
 『やんばる樹木観察図鑑』與那原正勝著、ぱる3企画発行
 『熱帯の果実』小島裕著、新星図書出版発行
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