トックリヤシ
 南の島の典型を表現したイラストにはたいてい椰子の木が描かれている。それはその通りで、椰子の木の多くは南方系の出身となっている。
 ハワイなど南の島の浜辺のイラストに描かれているのはたいていココヤシである。沖縄も南の島なので、そのイラストにココヤシは似合わなくも無い。自生していたわけではないが、実際に、ココヤシは沖縄の浜辺にもあるにはある。が、私の身近に感じているヤシはココヤシでは無く、アレカヤシとトックリヤシである。
 アレカヤシとトックリヤシは、どちらも椰子の中では独特な形をしている。だから、その存在と名前を若いうちに覚えた。アレカヤシは正式の和名をヤマドリヤシと言い、前に紹介している。で、今回はもう一つのトックリヤシ。

 トックリヤシは独特の形をしており、酒好きの私にしてみればその名前にも親しみがあって、すぐに覚えた。おそらく、アレカヤシよりも先だったと思う。
 トックリとは酒の器である徳利のことだが、ウイスキーもワインも泡盛(まれには使うこともある)も徳利は使わない。徳利と言えば日本酒である。日本酒好きの私なので、徳利はごく身近な器なのだ。で、トックリは親しみ深い名前となっている。
 私が若い頃から、トックリヤシは身近にあった。それも、あちらこちらにあった。沖縄で一時期ブームになったとのことである。その頃、たくさん売れたらしいのである。おそらくその頃のものが、今でもあちらこちらに多く残っているのだと思う。

 トックリヤシ(徳利椰子):添景・公園
 ヤシ科の常緑中木 マスカリン諸島原産 方言名:なし
 名前は見た目から。幹の基部が膨らんで徳利の形になる。酒飲みが見れば、徳利以外思い浮かばないかもしれない。名付けた植物学者は酒飲みだったかもしれない。
 高さは5mと文献にあったが、それほど背の高いトックリヤシを私は見たことが無い。たぶん、原産地ではそうなるのであろう。沖縄では、私が見た限りでは3mほど。
 陽光地を好み、成長は遅い。幹の基部が膨らんで徳利の形になるが、その膨らみ方には個体差がある。乾燥気味にすると幹の膨らみがより大きくなるとのこと。
 タイワンカブトムシの食害を受ける。寒さには弱い。

 実
 記:島乃ガジ丸 2008.4.15  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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