シュロ
 沖縄のことわざを集めた『黄金言葉』(クガニクゥトゥバと発音する。金言、または、ことわざのこと)を読んでいたら、次のような黄金言葉が目に付いた。
 イナグヌワタ(女の腹)ー クルチチ(黒縄)ン ク(朽)タスン 「女の腹は黒縄も腐らせる」と和語が添えられている。それを読んで、この黄金言葉が意味するところを私は、「女の腹黒さは、腐れにくい黒縄(シュロ縄)を腐らすほどだ。だから、男共よ、女を信用するんじゃない。」なのかと思ったのだが、そうではない。
 「女の腹」の腹は肝っ玉という意、全体としては、「腐りにくい黒縄も腐らせるほどに女は辛抱強く、精神力が強い」と『黄金言葉』では解説されている。
 この本の筆者は女性。で、まだ若い。本を図書館に返してしまい、今確認することはできないが、たぶん、まだ30歳になるかならないかという若さ。その若さと女性であるということからくるのだろう、彼女の表現は甘い。甘いというのは、表現力が甘いというのでは無く、同性に対する見方が甘いということ。私に解説させてもらえるなら「腐りにくい黒縄も腐らせるほどに女(特にオバサン)は傍若無人で、図々しい」と表現したい。

 いつも不思議に思うことがある。スーパーのレジで並んでいる時、オバサンたちはレジ係りが「○○○○円です」と合計金額を言った後で、バッグを開き、財布を捜し、財布を取り出し、「ちょっと待ってよ」と言いながら、さらに1円玉、5円玉などの小銭を探しだす。「カードはお持ちですか?」と訊かれて、また、「ちょっと待ってね」と言いつつカードを探し、取り出す。財布ぐらい手に持って置けよ!カードくらい準備して置けよ!それらが必要だってことは初めから分かっていることでは無いか!と不思議に思うのだ。
 もっと不思議なことがある。私は車の運転が好きでは無い(平日はほとんど毎日運転しているが)ので、なるべくバスを利用するようにしている。バス賃は200円と決っているので、バスが来る前に200円を準備し、手に握っている。ところがだ。オバサンたちは不思議な行動をする。彼女たちはバスに乗ってからバッグを開け、財布を捜し、そして200円を取り出す。あるいは、回数券を探す。200円もだが、回数券ならばなおさらのこと、バスに乗る前に手に持って置けよ!と私は思う。お前がバッグを開け、財布を開け、回数券を探すまでの間、俺は、冬ならば冷たい風に晒され、夏ならば炎天下に晒されているのだ。後ろに続く人のことをお前は何とも思わないのか!と不思議に思うのだ。

 そんな不思議な女の、唯我独尊の女の、その腹には腐らされてしまうが、一般には腐れにくいとされている黒縄は、樹木と支柱の結束や、竹垣の結束などによく使われているので一般でも目にすることが多いはず。シュロの繊維をウチナーグチ(沖縄口)ではスルガーといい、これでなった縄のことをクルチチ(黒縄)という。クルチチは倭語でシュロ縄といい、現在でも造園関連の現場では無くてはならないもので、よく使われている。
     
 シュロ(棕櫚):公園・街路・海浜地
 ヤシ科の常緑小高木 原産分布は九州以南、中国 方言名:スル
 シュロは属名だが、シュロというと概ね日本原産のワジュロを指す。幹は直立し、高さは6mに達する。他の多くのヤシ科の植物同様、葉は幹の上部にのみつく。
 幹は木材として柱や器に加工でき、毛苞は、上述の通り縄となるが、他に刷毛や箒の材料にもなる。葉は編んで、帽子や敷物にできる。
 同属で中国原産のトウジュロと共に、庭園の植栽樹木としてもよく用いられる。沖縄でよく見かけるシュロはこのトウジュロで、高さは3〜5mほどになる。
 記:2005.2.11 島乃ガジ丸  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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