シマグワ
 鳥たちが桑の実を食べて糞をする。糞には桑の種が混ざっていて、落ちたところから芽が出てくる。植えては無いのに生えてくることを沖縄口(ウチナーグチ)ではナンクルミーと云う。ナンクルは「なるように」とか「自然に」とかといった意味。ミーは「芽生える」とか「実る」とかいった意味。ちなみに、ナンクルナイサは多くのウチナーンチュ(沖縄人)のモットーである「なるようにしかならないさぁ」となる。
 鳥によって種が運ばれてナンクルミーする植物は、他に、ゲットウ、ハリツルマサキ、ゲッキツ、ヒカンザクラ、アカギなどがある。コンビニに行けばいくらでも美味しいお菓子が手に入る今では、シマグワの実を食べる子供をほとんど見かけない。つまり、果樹としての価値はほとんど無い。また、暴れ(自然の状態では形が整わない)木なので、狭い庭だと邪魔になる。なので、ナンクルミーのシマグワは引き抜かれることが多い。であるが、野原にナンクルミーしたシマグワはそのまま成長し、やがて実を着ける。

 赤、紫、黒といった色に熟したナンデーシー(桑の実)は甘酸っぱくて美味しかった。鳥たちも大好きだが、人間の子供も大好き。私も子供の頃は木登り遊びをしながら良く食べた。ナンデーシーを食べると舌が紫色に染まる。指先も染まる。うっかりすると服にも汁が飛んで汚す。母ちゃんに怒られる。懐かしい味は、もはや思い出でしか無い。

 であったが、私も歳を重ねる内、脳廃る爺となって、300坪の畑を始めた頃(2012年夏)からナンデーシーは毎年口にするようになった。畑にシマグワの木があり、毎年実を生らしていた。ナンデーシーは酒にもなったので、ナンクルミーした苗木を掘り取ってあちらこちらに移植して、2017年頃からたくさん収穫できるようになった。
 「あー、しまった」と思い出した。たくさんできていたはずなのに今年(2018年)は収穫するのを忘れていた。・・・忘れていた?・・・「あーそうか」と思い出した。去年11月頃から腰痛が酷くなって、ナンデーシーが熟する頃の4〜5月、クワノキに上るのも脚立に上るのも腰がふらついてできなくなっていたのだ。

 シマグワ(島桑):庭木・公園樹・果樹
 クワ科の落葉中木。九州南部〜南西諸島、台湾、東南アジアに分布。方言名:クワーギ
 名前の由来は資料が無く不明。クワは広辞苑にあり、桑の字が充てられ「クワ科の落葉高木クワ類の総称」とのこと。南西諸島に産するものにシマ(島)と名のつくものが多くあるが、本種も九州南部〜南西諸島に分布することから島なのだと思われる。
 別名ヤマグワとあるが、ヤマグワは倭国に分布する種。両者は亜種関係なのかと思って学名を調べたが違うようで、ヤマグワはMorus alba、シマグワはMorus australis。
 成長が早く、放置しておくと樹形が乱れるため庭木として扱いにくい所もあるが、大木にはならないので民家の庭でも使える。果実は熟すると甘酸っぱく美味。小鳥たちが集まってくる食餌木にもなる。人間が食べても美味しい。果実の熟期は4〜5月であるが、台風で葉が吹き飛ばされたりすると11月頃に収穫できることもある。
 養蚕用にその葉を用いる。小学生の頃、理科の実験で扱った覚えがある。材は工芸用材などに利用され、樹皮は製紙の原料となり、果実は食用となる、役立つ樹木。

 花

 実
 訂正加筆:2018.9.6
 記:島乃ガジ丸 2004.9.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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