ネズミモチ
 アパートの駐車場、私の車を停める場所のすぐ傍に高さ4m近い樹木が茂っている。春に白い花を樹冠につけ、香りも楽しませてくれる。
 その木の左にはクロキ(リュウキュウコクタン)、右にはオオムラサキシキブ、それと並んでニンニクカズラが植わっている。クロキ、ニンニクカズラは元々知っていて、オオムラサキシキブは数年前に調べて、それと判った。が、春に白い花を咲かせるその木だけがずっと確定(学問では同定というらしい)できずにいた。文献の写真を見るとネズミモチにもトウネズミモチにも似ている。どちらなのか判断がつかなくて、ごく身近にある植物であったのにもかかわらず、紹介するのが遅れてしまった。

 ネズミモチとトウネズミモチの違い、『沖縄園芸百科』に「トウネズミモチは沖縄在来のネズミモチよりも刃先のとがりが鋭く、楕円形というよりも披針形に近い。成木になると、葉も、木そのものも、在来のネズミモチより大きくなります。」とある。植物については詳しいといわれている有名な黒島寛松さん、その記述なので間違いはないだろう。
 昨日、アパートの、ネズミモチなのかトウネズミモチなのか判断がつかない樹木の枝を切り取り、職場にあるネズミモチなのかトウネズミモチか判断のつかない樹木の枝を切り取って、並べて見比べた。違いが判った。葉の大きさ、厚さが違う。もう一つ、同じく『沖縄園芸百科』に、「(ネズミモチの葉は)皮質で、指で曲げるとパチパチ折れます。」とあったので、やってみると、アパートのものはそうなった。で、確定した。

 ネズミモチ(鼠黐):添景・生垣
 モクセイ科の常緑中木。関東以南、沖縄。方言名:サーターギ
 強壮薬にもなるという紫黒色の果実が鼠の糞に、葉がモチノキに似ているからネズミモチという和名であるが、倭人とウチナーンチュのものの見方の違いなのか知らないが、ウチナーグチ(沖縄口)では糞の匂いから遠く離れる。サーターギ(砂糖の木)という。葉を揉むと黒砂糖の香りがするところからきている。別名タマツバキ。
 高さ2〜3m。半日陰や乾燥地でも生育する丈夫な植物。萌芽力もあり強剪定に耐えるので低木の生垣、刈込み物に適する。耐潮風性も強いので海浜地でも使える。
 白色の小さな花が多くかたまって円錐形に枝先につく。このような花のつけかたを円錐花序というらしい。樹冠にいっぱいつける。開花期は3月から5月。
 ネズミの糞に似ているという実は、12月から2月に結実し、黒紫色に熟す。種子は珈琲の代用として利用できるらしい。炒って、挽いて、お湯掛けて。

 花1

 花2
 記:島乃ガジ丸 2005.4.22  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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