ナリヒラダケ
 私は、世の中を舐めており、人生というものについても甘い考えでいる。だから、いつでもなんにしても、たいていは「何とかなるさ」といった気分で生きている。これまでの人生で、「何とかなるさ」と思って何とかならなかったこともたびたびあるが、うまくいかないことも負けることも、いろいろあってこその人生であろうと開き直って、やり過ごしている。まあ、心理学的に言えば、逃避ということであろうが、沖縄の風土は優しい。そんな生き方でも十分やっていける。東京の都会の中で、辛い思いで毎日を生きている人がいれば、沖縄の風に吹かれてみるといい。気分変わるかもしれない。

 甘い考えの私は、学生の頃も真面目じゃなくて、ほとんど勉強をしなかった。文学部出身ですというのも恥ずかしいくらい、その方面の知識は少ない。特に、韻文(詩・短歌・俳句の類)が得意でない。深く考えなくても済む雑文は得意で、そういった読み物は多く読んでおり、そういったテキトーな雑文を書くのも得意である。なわけで、ガジ丸の記事も高尚なものとはならないのである。真面目な方には申し訳ないことである。
 韻文が得意でない、と書いたが、詩人では山之口獏が大好きで、俳人では山頭火が私の卒論のテーマだった。よって、山之口獏の周辺の詩人、山頭火の周辺の俳人などの知識はいくらかある。しかし、歌人については、私はほとんど知識が無い。

 ナリヒラダケを調べる過程で、在原業平という名前がでてきた。できの悪い日本文学科出身の私でもその名前は知っていた。平安時代の歌人ということまでは知っていた。広辞苑にあった説明のうち、「六歌仙・三十六歌仙の一」については、そういうのも、そういえばあったっけとうろ覚え。「容姿端麗、放縦不羈、情熱的な和歌の名手、色好みの典型的美男」については、まったくの初耳であった。小野小町は知っているけどね。歌人というよりも美人ということでね。美男子には興味無いもんな。敵のようなもんだし。
 ※注、韻文とは逆に「数・音節数などの制限のない通常の文章」(広辞苑)のことは散文という。本題には関係ないことだが、文学的な知識を少しでも見せたくて。

 ナリヒラダケ(業平竹):添景
 イネ科タケ亜科の常緑高木 原産分布は四国、九州 方言名:なし
 ナリヒラダケを広辞苑でひくと業平竹と漢字があてられている。ということは、その名の由来は在原業平からきているのかと思うが、何故、業平なのかが解らない。手元に植物の語源に関する文献が無いので調べようも無い。まあいいか、で済ませる。
 と思ったが、ふと、広辞苑の「ナリヒラダケ」の次の項目に目が行く。「なりひらづくり(業平作り)」なるものがあって、「在原業平のような身のつくり。いかにも美男子らしいなりかたち」と書かれてあった。在原業平は美男子の代名詞らしい。女でいう小野小町のようなものだ。○○小町が美人を指すように業平がつけば美男子というわけだ。ということでナリヒラダケは、「美男子らしいなりかたち」をした竹ということになる。
 その通り、ナリヒラダケは葉に班が入り、幹も紅紫色で美しい。全体の形もすっきりしている。小型の竹なので、小さな庭の添景に使える。高さ5〜8メートル、径2〜4センチ。鞭根性の竹で、根茎は地中を這い、広がる。
 記:島乃ガジ丸 2005.10.10  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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