マサキ
 「サカキの木って探せない。欲しいんだけど」と知人に頼まれた。庭に1本植えておいて、その枝を仏前に供えるものに使いたいらしい。サカキは、名前はよく聞くが、いつも参考にしているどの文献を見ても、その記載が無い。
 図書館に行って調べる。サカキは榊と漢字で書き、ツバキ科の常緑小高木とあった。昔から神木とされており、その枝葉を神前に供えたり、玉串として神事に用いたらしい。本州以南に分布するとあるので沖縄にも自生していると思われるが、なぜか沖縄の植物の本に記載がない。個体数が少ないのか、山地にしか生息しないのか、まあ、あまり一般的では無いということなのだろう。少なくとも庭木としてはほとんど生産されていないようであった。
 「サカキは沖縄では入手が難しい」と知人に返事したのだが、
 「そんなこと無いでしょう。沖縄にはたくさんあると聞いているわよ。」と応える。
 「誰から聞いたんですか?」
 「父からよ。」・・・その知人は還暦に近い歳なので、その父親だと80歳を超えているだろう。ボケていらっしゃるのではありませんかと心では思いながら、
 「もう少し調べてみましょう」と答え、さらに調べることにした。
 『沖縄植物野外活用図鑑』には方言名での索引もある。「80過ぎた老人のことだ。もしかしたら方言名のサカキのことを言ったのかもしれない。」と推理して、索引を見る。私の推理は当たっていた。サカキという文字がそこにあった。サカキのページを開く。ウチナーグチ(沖縄口)でサカキと呼ばれる植物は、マサキのことであった。
 知人の父親は、シマクトゥバ(島言葉)を大切にする真っ当なウチナーンチュなのであった。それをボケ老人などと勘繰るなんてまったく私は、未熟者のウチナーンチュなのである。悲惨な戦争を知らずに、生きる辛さや苦しみも知らずに育って、ついでに、大切な自分の島の言葉も知らずに大人になって、この若輩者は、まったくもって、申し訳ないと思うのであった。

 マサキ(柾・正木):添景・生垣
 ニシキギ科の常緑中木 北海道南部〜沖縄、台湾等に分布 方言名:サカキ、フチマ
 広辞苑に高さ2mとあったが、沖縄では3m以上にまで成長する。海岸近くに自生しているのを見かける通り耐潮風性に強い。海辺の中木生垣に向く。また、耐陰性があるので日陰地になるところでも使える。成長が早く樹形が乱れやすいが、萌芽力が旺盛で強剪定に耐えるので、適宜、剪定し、形を整えると良い。サカキ同様、枝葉を神前に供えるのに用いられる。
 花は特に観るほどのものではないが、開花期は6月から7月。園芸品種にキンマサキ、ギンマサキ、フイリマサキなどがあり、主に葉の姿を楽しむ。

 葉と花芽

 参考写真 サカキの葉
 記:島乃ガジ丸 2005.5.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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