クロチク
 竹はその生え方から、株立ち性と鞭根性に分かれるようだ。株立ちはその通り、棹が狭い範囲から群れて出てくる。鞭根性は地下茎が伸びて広がるので、離れた所からも出てくる。株立ち性にはキンシチク、ダイサンチク、マチク、リュウキュウチクなどがあり、鞭根性にはクロチク、ナリヒラダケ、ホテイチクなどがある。
 鞭根の鞭はムチのこと。ムチというとSMの女王のムチを、下品な私はすごに想像するが、上品な人は乗馬の鞭を想像するかもしれない。ムチのような根は、実際に乗馬の鞭に加工されるとのこと。その他、ステッキ、傘の柄にも使われるとのこと。

 職場にクロチクがある。その根が鞭のようであると知ったからには、いつか掘り出してやろうと思っている。もちろん、人や馬を鞭打つ鞭に使うのでは無い。自分用のステッキを作ってみたいと考えている。紳士というには、私ははるか遠いのだが、いずれ足腰が弱くなり、ステッキの必要な時が来る。その時、愛用の物を持っていたい。
 クロチクの棹は黒い、だからクロチクという名前なんだが、その根もまた独特の色をしているのではないかと想像する。独特の色の根を磨いて、艶を出して、世界に一つだけの立派なステッキ。それを持つ私が、浮浪者の格好ではないよう願う。
     
 クロチク(黒竹):景観、添景、鉢物
 イネ科の常緑タケ類 中国原産 方言名:クルダキ
 名前の由来は調べなくても一目瞭然、棹が黒いのでクロチク(黒竹)。方言名も黒竹をそのままウチーナーグチ(沖縄口)読みしたクルダキ。別名をシチクというが、これは紫竹ということ。棹の黒紫色を黒と見るか紫と見るかの違い。
 高さは1〜2mと文献にあったが、私が見たものは3m近くになっていた。それでも竹としては小型。径は2〜3センチで、葉も細く、繊細な感じがする。
 全体に小型で、葉は繊細で、棹の色は落ち着いていて、しっとりとした雰囲気を持っている。知り合いの茶道教室の庭の一角に植えられてあるのを私は見ている。しっかりと存在はしているが、でしゃばらない。いかにも、茶庭にピッタリの風情であった。
 棹は、若いうちは緑色だが、年々黒紫色となる。鞭根性の竹。鞭根の節についた芽がタケノコとなるが、食用になるかどうか、文献には何も書かれていなかった。
 学名は、Phyllostachys nigra (Lodd.) Munro var. nigra
 記:島乃ガジ丸 2009.9.16  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
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