コノテガシワ
 20年ほど前、ナイヤガラの滝を観光する際、アメリカ合衆国からカナダへ渡った。季節は春、3月か4月頃。春とはいえ、さすが北国、雪は見えなかったが、空気は冷たく、寒かった。カナダにいたのは数時間だったのでナイヤガラの滝以外は観なかったが、景色に背の高い樹木が多いな、という印象を持った。その時は気付かなかったが、おそらくそれらの樹木の多くは針葉樹であったに違いない。カナダや北ヨーロッパの景色には背の高い針葉樹がよく似合う。針葉樹の葉は寒さに強い形状なのである。
 本土(沖縄以外の他府県)を旅した際もスギ、ヒノキなど、スラっと背の高い針葉樹が目につく。沖縄の景色には無いからだ。そう、亜熱帯の沖縄には背の高い針葉樹が似合わない。先ず、葉の形状が寒さに強いものである必要は無い。そして、背が高いと台風にやられてしまう。沖縄には、横に広がるずんぐりとしたガジュマルのような木が似合う。

 沖縄にも針葉樹が無いわけでは無い。リュウキュウマツ、ナンヨウスギ、カイヅカイブキ、オキナワハイネズ、ハイビャクシンなどがすぐに思い浮かぶ。このうち、真っ直ぐ伸びてスラっと背の高い針葉樹はナンヨウスギくらい。リュウキュウマツは横広がりだし、オキナワハイネズ、ハイビャクシンは匍匐性、カイヅカイブキも背は高くなるが、全体にモコモコとした樹形。今回紹介するコノテガシワも針葉樹の一つで、カイヅカイブキのようにモコモコした形となる。モコモコ具合は、背が低い分、カイヅカより強い。

 コノテガシワ(児手柏・側柏):添景・生垣
 ヒノキ科の常緑中木 北海道南部から九州、沖縄、他に分布 方言名:フタウムティ
 小枝が左右にのみ出て扁平な形となる。それを児(子供)の掌に見立ててコノテ。カシワ(柏)はブナ科の落葉高木で本種とはたぶん無関係。別に「ヒノキ・サワラ・コノテガシワなどの常緑樹を古来「かしわ」と訓みならわす」と広辞苑にあった。
 「葉はヒノキに似て鱗片状で表裏の別なく」とも広辞苑にあり、この「表裏の別なく」が方言名のフタウムティに繋がる。フタは二つの二、ウムティは表のこと。
 『新緑化樹木のしおり』には「高さ3m」とあり、『親子で見る身近な植物図鑑』には「高さ15m」とあり、広辞苑には「高さ約2〜6メートル」とあった。沖縄ではあまり大きなものを私は見たことが無い。せいぜい2〜3m。県外を旅した時に、どこかの街で大きなコノテガシワを見た覚えはある。それでも5m位ではなかったか。
 陽光地を好むが半陰地でも生育する。成長は速い。自然に整った樹形となるので、庭の添景に向く。また、刈込みに耐えるので生垣に使える。春、白い花が枝の先にポツポツと咲くが、小さくてあまり目立たない。

 花

 生垣
 記:島乃ガジ丸 2006.4.12  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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