カキバチシャノキ
 今年(2013年)8月の暑い日、二か月近くも雨の降らない干ばつで、見習い農夫の私がこの先の生活に不安を覚えていたある日のこと、畑から近い(車で5分ほど)所にある西原農村公園に出かけ、山道を30分程(暑いので長くは無理)散策した。
 西原農村公園の入口近くは墓が並んでいる。その日は旧暦の7月5日で日曜日、旧暦7月7日七夕の日には墓掃除をするという慣習が沖縄にあり、平日が忙しい人はその前後にやってもいいことになっている。ということで、その日も2組が掃除をしていた。
 彼らに会釈して私はさらに先へ進む。ふと気付いたのだが園路の周りの雑草が、その多くが枯れている。墓掃除の大部分は草刈りである。夏は雑草が伸び放題となるのでそうなる。「草刈りが面倒なので除草剤でも撒いたのかなぁ」と思った。

 西原農村公園の端まで行って用を済ませ、私は引き返した。入口近くの墓の一つで、草刈り機で草を刈っている人に声を掛けた。「道端の雑草が枯れていますが、除草剤を撒いたのですか?」と。「除草剤を撒くことは無いよ、たぶん、この日照りでは雑草も生きていけないのでしょう」とのことだった。確かにそうかもと見習い農夫は肯いた。

 さて、「西原農村公園の端まで行って用を済ませ」の用とは、たったそれだけのことで炎天下を歩いたのか、バッカじゃないの?と思われるかもしれないが、西原農村公園の端まで長袖Tシャツが全面濡れるほど汗をかいて、カキバチシャノキの実の写真を撮りに行ったのである。この時期実を着けていると文献にあったので頑張った。

 カキバチシャノキ(柿葉萵苣の木):公園
 ムラサキ科の落葉中木 日本では奄美諸島以南に分布 方言名:不詳
 名前の由来は『沖縄植物野外活用図鑑』に「葉は円心形でカキの葉によく似ている」とあり、カキバ(柿葉)はそれ。チシャノキについてはチシャノキという種があり、その名の由来は『木の名の由来』に「若葉を食用とし、その味が野菜のチシャ(萵苣)に似ていることから起こったものらしい」とあった。チシャノキは同じムラサキ科だが本種とは別属。ただ、チシャノキもまた別名をカキノキダマシとも言い、葉の形状がカキに似ていている。つまり、チシャノキと本種も似ているということになる。
 高さは4〜8mになる。茎の先や葉の脇から集散花序を出し花を着けるとのこと。「花は黄緑色で小さい」とあるので目立たないのであろう。
 果実は甘く食用になるとのことだが、私は未経験。文献の写真は実が着いている写真で8月のもの、私の写真も8月、よって、結実期は夏としておく。
 ちなみに学名、
 カキバチシャノキ Cordia dichotoma Forst.
 チシャノキ Ehretia ovalifolia Hassk.
 マルバチシャノキ Ehretia dicksonii Hance

 実

 葉
 記:島乃ガジ丸 2013.8.17  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
 『藤田智の野菜づくり大全』藤田智監修、NHK出版編
 『やんばる樹木観察図鑑』與那原正勝著、ぱる3企画発行
 『熱帯の果実』小島裕著、新星図書出版発行
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