ギョボク
 ツマベニチョウを調べていると、『沖縄昆虫野外観察図鑑』に「那覇市の末吉公園にも多かったが、公園拡張のため食草のギョボクが切り倒されて、大変少なくなった。」とある。「何てこった!」と思う。末吉公園は私が時々散歩する公園だ。しかも、ずっと前からギョボクを探していた。同書は1987年の発行、20年ほども前の話である。20年もあれば、切り倒されたギョボクの子供達が育っているに違いない。ツマベニチョウの写真を撮りながらギョボクも探せるはず。一石二鳥だ。ということで、出かける。
 ギョボクの開花期は5月から7月。ツマベニチョウを調べて、ギョボクが末吉公園にあると知ったのは7月初めだ。まだきっと咲いている。花は、科は違うが、ショウロウクサギ(クマツヅラ科、ギョボクはフウチョウソウ科)に似ている白い花。葉にも葉柄にも特徴があって、見ればきっと、それがそれであると判るはず。

 7月の週末の末吉公園、ツマベニチョウはすぐに発見できた。元気な子供達に邪魔されてその写真は撮れなかったが、少なくともギョボクの写真は撮ってやろうと、ツマベニチョウを目で追いかけ、歩けるところは歩いて追いかける。それを数回繰り返した。夏盛りの太陽の下でだ。たっぷり汗をかき、途中でへばってしまった。諦める。

 それから一週間後の週末、ツマベニチョウが生息すると文献に書かれてあった具志頭遊歩道へ出かける。南部戦跡巡りのついででもあった。そこでもツマベニチョウはすぐに発見できる。しかし、相変わらずせわしなく動くチョウだったので写真は撮れなかった。しかしそこでは、ギョボクを見つけることができた。花は咲いていなかったが、ギョボクは葉と葉柄に特徴がある、おそらく間違いない。
 具志頭遊歩道はそう長い距離では無い。ただ、起伏は激しかった。さらに、その日はとても暑かった。遊歩道の一周でへばってしまった。南部戦跡巡りは諦めた。

 ギョボク(魚木):添景
 フウチョウソウ科の落葉中木 薩摩半島以南、南西諸島などに分布 方言名:アマキ
 葉柄、葉脈が黒紫色をしている。特に葉柄は長くて、その色がよく目立つ。私はそれほど驚かなかったが、昔の人は、その葉柄の色を見て「ぎょっ!」と驚いたかもしれない。ということからギョボクという名前になった、・・・のでは無く、正しくは「材が魚釣に使う疑似餌に利用されることから」といくつかの文献に名前の由来があった。方言名はアマキの他、アモキともあるが、どちらも由来は不明。
 花の付きかたは、ショウロウクサギ(クマツヅラ科)に似ている。花の形は違うが、雄しべを長く突き出しているところも似ている。色は白、開花期は5月から7月。
 葉にも葉柄にも特徴があって、花が咲いていなくてもそれを見ればギョボクであると判別しやすい。葉は三出複葉で、葉柄、葉脈が黒紫色をしている。
 高さは10mほどになる。半日陰でアルカリ土壌を好む。耐風性は弱い。分布は上記の他、台湾、東南アジアなど。ツマベニチョウの食草。材は疑似餌に利用される。

 葉

 ギョボクの証拠
 記:島乃ガジ丸 2008.8.22  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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