ギンコウボク
 「旬のものを旬にお届け」という風にありたいのだが、正統派ウチナーンチュである私は正統派らしくのんびり屋なので、写真は旬のものを撮るには撮るが、それを紹介するのは何ヶ月も遅れてしまう。今回紹介するギンコウボクも春から初夏の花。
 春、見慣れない花が職場に現れた。樹木そのものが新顔。同僚Tの話では、「会長が知り合いから貰ったものだそうです。ビャクダンって言ってました。」とのこと。
 写真を撮って、さっそく調べる。広辞苑に記載があった。「ビャクダン科の半寄生常緑高木。インドネシア原産で近縁種とともに香料植物として栽培。高さ6メートル余。葉は対生し黄緑色。雌雄異株。花は初め淡黄色、のち赤色。(後略)」とのこと。
 「花は初め淡黄色、のち赤色。」とあるが、職場のものは白色である。なので、これでは無い。Tにそう言うと、「ビャクダンじゃなくて、ビャクランです。」との答え。
 で、ビャクランを調べる。広辞苑に無い。で、文献を調べる。無い。ただ、『沖縄植物野外活用図鑑』にハクランボクという名前で似たようなのがあった。ハクランボクは『沖縄園芸植物大図鑑』にもあり、それは別名で、本名はギンコウボクとのこと。自分が撮った写真と2つの文献の写真を見比べる。職場のものはギンコウボクのようである。
 と、以上のことも既に判っていたが、季節はもう、秋となってしまった。

 ギンコウボク(銀厚朴):添景
 モクレン科の常緑小高木 フィリピン原産 方言名:不詳
 ビャクランという名前は参考にしているどの文献にも無かった。『沖縄植物野外活用図鑑』にハクランボク、『沖縄園芸植物大図鑑』にはギンコウボクという名前で紹介されていて、どちらにも別名としてギンコウボク、ハクランボクがあり、また、ギョクランという別名もあった。ネットで調べるとギンコウボクの方がハクランボクよりはるかに優勢であったので、ここでも本名はギンコウボクとしておく。
 銀厚朴という漢字は『沖縄園芸植物大図鑑』にあった。朴はエノキのこともいうが、ホオノキのことも指す。ホオノキは同じモクレン科の落葉高木。「銀色の花が咲く葉の厚いホオノキに似たもの」という意味なのかもしれない。念のためネットで調べてみると、いくつかのサイトには銀香木としてあるものもあった。
 『沖縄植物野外活用図鑑』に「県内では庭園樹として時々見られ、高さ3mくらいになったものもあります。」とあったが、職場のものは5m近くある。よって、高さは3〜5メートルとしておく。同書に「花は淡黄白色」とあったが、職場のものは、初めは白、しだいに淡く黄味がかってくる。花は、葉の腋から花柄を出してつく。開花期についての記載がどの文献にも無い。職場のものは4月から6月の開花であった。
 『沖縄植物野外活用図鑑』ではフィリピン原産、『沖縄園芸植物大図鑑』では「原産地は中国南部」とあった。ネットでは前者の方が多かったので、ここでもそうした。

 花
 記:島乃ガジ丸 2007.9.22  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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