サンゴジュ
 大学時代の友人、今は埼玉在のKから「ガジ丸HPのネタになると思うから」と本が1冊送られてきた。昭和51年に当時の通産省が発行した『沖縄国際海洋博覧会の記録』という、ただの記録にしては大仰な装丁の立派な本。さすがお役所仕事と思う。
 パラパラと捲っただけだが、中身は、先述したようにただの記録。いつ開催された、どこで開催された、どこが主催し、どこそこが参加した、会場面積はいくら、会場建設に関わった工事内容はなになに、催し物の内容はあれこれ・・・などといったこと。海洋博そのものについては、それなりの意義があったと思うので私も非難はしないが、海洋博を開催するための準備段階からの道路工事、会場の建設工事などについては大いに文句がある。済んでしまったことなので今さらなんだが、何がどう悪かったのかをそのうち検証してみたいと思う。
 とりあえず、海洋博に関わる工事で沖縄の自然が大打撃を受けた、ということだけは、これまでにいくつかの本から、または新聞、テレビなどから情報を得ている。特に、海洋博前と後では海の中の景色が一変したと聞いており、私もまたそれを実感している。珊瑚が激減したのであった。・・・表現が正確では無い。”生きている”珊瑚が激減したのであった。

 花の蜜にもいろいろな味があって、美味い不味いがあるようで、虫の寄り付かない花、少し寄り付く花、まあまあ寄り付く花、たくさん寄り付く花などがあるみたいである。職場の庭にあるサンゴジュの花は、喩えて言えば神戸牛、伊勢エビ、名古屋コーチン、関サバ、トラフグのようなものかもしれない。その花にはたくさんの種類の虫が集まってくる。チョウやハチたちが仲良く蜜を吸っている様子を見ると、なにか愉快な気分になってくる。「ぼーくらはみんな、生ーきている」などと唄いたくなる。手の平を太陽に透かしてみて、私もまた、小さな虫たち同様、この自然の中で生かされているのだなあ、などとも思ってしまう。
 職場のサンゴジュは年々大きくなり、毎年たくさんの花を咲かせ、たくさんの実をつける。ところが、その名の元になった海の珊瑚はというと、この三十年間で相当量を減らしてきた。残念というより悔しいという気持ちになる。当時、珊瑚への悪影響を警告する大人たちが少なかったことが悔しい。杜撰な工事を計画した政府に、現状回復を要請しなかったことが悔しい。「なるようにしかならんさあ」というウチナーンチュの生き方は、私もそうであり、好きな生き方なんだが、時には、悪事をのさばらせてしまう結果になってしまい、悔しい思いをしたりする。

 サンゴジュの花はたくさんの虫たちを幸せにし、それを見ている私もまた幸せな気分にしてくれるのだが、海の珊瑚を連想してしまうと、ちょっぴり苦い思いも湧きあがる。

 サンゴジュ(珊瑚樹):添景・生垣
 スイカズラ科の常緑高木 原産分布は本州西部以南、沖縄、台湾 方言名:ササギー
 成長は早く高さ10mほどにもなるが、萌芽力が強く剪定に耐えるので、刈込んで形を整え、庭の主木、または生垣などにできる。半日陰でもよく生育する。
 文献に記載は無かったが、花は芳香を放つ。少なくとも職場のサンゴジュは満開の時、傍を通ると甘い匂いが漂っていた。白い小さな花が何十となくかたまってつき、円錐花序となり、それが枝先にいくつもできる。開花期は3月から5月。
 花よりも赤く色付く実の方に観賞価値があるとされている。サンゴジュの名は、赤く熟する果実が枝先にあって、それが珊瑚の玉に見えるから。結実期は5月から6月。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2005.6.12  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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