モチノキ
 職場は、同じ敷地内に事務所があり、社長宅があり、社長の父親である先代社長宅があり、仕事は別だが、社長の兄の家もある。それぞれの駐車場、社員や来客用の駐車場に庭もあって、敷地は広い。広い敷地に多くの樹木が植えられてあって、近辺では緑の多い一角となっている。お陰で私はHP用の植物、昆虫などの写真が身近で撮れるわけ。
 夏になると近所の子供たちが勝手に敷地内に入ってくる。概ね休日になるとやってくるので、今は週末くらいなんだが、夏休みになるとほぼ毎日やってくる。彼らは虫取り、主に蝉捕りにやってくるのである。手に手に虫取り網を持って。

 私が子供の頃は、蝉捕りというと、使うのは網では無く鳥もちであった。鳥もちのことを我々はヤンムチ(ウチナーグチ)と言い、それをイッセンマチヤグヮー(1セントのお店、駄菓子屋のこと)で買った。概ね1セントで駄菓子を売っている店であったが、ヤンムチは、よく覚えていないが、1セントでは買えなかったと思う。はまぐりの貝殻に入っていて、貝を開くとその片方にちょこっとあった。それを細い竹の棒の先につけて蝉を狙うのである。友人の中の上手い奴には、メジロを捕まえる者もいた。
 そのヤンムチ、モチノキの樹皮から作られるものであることを、私は初めて知った。

 モチノキ(黐の木):主木・添景
 モチノキ科の常緑高木 東北以南、沖縄、他に分布 方言名:ムッチャ、ヤンムチギー
 樹皮から鳥黐(とりもち)が作られることからモチノキという名前。鳥黐なんて、もう 今の若い人たちは知らないであろう。私も久々にその名を目にした。「モチノキ・クロガ ネモチなどの樹皮からとったガム状の粘着性物質。・・・捕鳥・捕虫に用いる。」(広辞 苑)のこと。子供の頃、ハマグリの器に入ったものを買って、蝉取りをした覚えがある。 鳥黐のことをウチナーグチではヤンムチと言う。で、方言名がヤンムチ木(ギー)となる 。もうひとつのムッチャはムチャムチャしているということ。
 高さは10mほどになる。自然に樹形は整う方であるが、萌芽力が強く、強剪定にも耐 えるので段作り、盆栽仕立てなどにも作りやすい。また、耐陰性が強く、耐潮風性も強い 丈夫な樹木。花は淡黄緑色で特に目立つものではないが、開花期は5月から6月。秋に赤 い球形の実をつけ、それが目立つ。葉に光沢がありきれいなので庭木に使われる。

 葉

 沖縄産

 沖縄産の葉
 記:島乃ガジ丸 2006.7.18  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
inserted by FC2 system