コガネノウゼン
 去年の4月、埼玉在の大学時代の友人に頼まれて、沖縄を訪れた彼の友人を観光案内した。会ったその日は、ヒージャー(山羊)料理を食い、その後、彼の希望で、ある有名な飲み屋へ行く。その飲み屋、酒も肴も美味いのだが、私はその雰囲気があまり好きでは無く、かつて2度ほどしか行ったことが無い。沖縄の文化人たちが集まるという飲み屋。
 翌日、沖縄のアメリカを感じてもらうためにコザ(現沖縄市)の街へ連れて行った。コザ一番街近くの駐車場へ車を停め、散歩する。それが目的で行ったのでは無く、そこにそれがあるということも、その時私は知らなかったのだが、偶然、鮮やかな黄色の花が満開の並木道へ出た。後で訊くと、イッペー通りと呼ばれる道であった。その道の存在を知らなかった私は当然、その花の時期に訪れたのは初めてで、「おー!」と声が出るほど感動した。同行の客はしかし、花よりだんごの口のようで、ほとんど興味を示さず、「きれいですね」の感想どころか、「何ていう花ですか」と質問することもなかった。

 通称イッペーと言う。イッペーは「いっぱい」、つまり「たくさん」という意味のウチナーグチ(沖縄口)で、知人の話では「花がいっぱい咲くからイッペーだ」とのことだが、まさかそんな、と思う。同じノウゼンカズラ科の落葉高木で、原産が南米のものにイペーという木があり、こちらは花の色が濃い桃色なのだが、これと混同したのではないかと私は思う。イペーは大木で、高さ20mにもなり、こちらのイッペーは、よく見かけるのは4、5mの高さで、花色も全然違うので、どうして両者を混同したのかは不可解なことなのだが、ウチナーンチュだからテーゲー(大概)だったんだとしか言いようがない。
 春、鮮やかな黄色の花を見せてくれる。4月の沖縄でとても目立つ木。これぞ南国の春の色って感じがする花の色。外来種なのではあるが、いかにも沖縄って感じがする。最近は民家の庭でも多く見かけるが、上述の沖縄市のイッペー並木が有名。

 コガネノウゼン(黄金凌霄):花木・添景
 ノウゼンカズラ科の落葉高木 原産分布はコロンビア、ブラジル 方言名:イッペー
 陽光地で良く育ち、花付きも多くなる。耐潮風性が弱いので、海岸付近での庭に用いるのは難しい。高さ10m以上に達する。開花期は3月から4月。
 英語名はゴールデン・トランペット・ツリー、その名の通り、金色(鮮黄色)のラッパ形の花を多くつける。方言名のイッペーは“いっぱい”という意味と聞いている。それが「なるほど」と肯けるほどに、樹冠に鮮黄色の花をいっぱいつける。
 『新緑化樹木のしおり』には高さ10〜20mとあるが、それほどの大木を見たことがない。同属のイペー(アカバナイッペー)には大木がある。
 “のうぜん”という漢字、とても“のうぜん”とは読めない難しい字なのだが、広辞苑にあったので、ここで使わせてもらった。

 花

 実
 記:2005.3.18 島乃ガジ丸  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
inserted by FC2 system