カイエンナット
 大家の庭にフトモモ科のような花をつける高木(高さ8m位)がある。それは私の部屋の側にあって、ベランダに立つとほんの3、4m先に見える。毎年花を咲かせていたに違いないが、こんな近くにあるのにも関わらず、今年の夏、その花に初めて気付いた。

 花の写真を撮って、何の木かを調べる。フトモモ科を調べる。似た花はあるが、花の付き方、葉の形が違う。知られていないフトモモ科の植物かと思って諦めかけていたら、植物に詳しい同僚のTが写真を覗き込んで言った。「それ、パキラだよ。」
 「パキラって、あの観葉植物のパキラか?しかし、この木、高さ8m位あるぜ。」
 「パキラは環境の良い所に地植えして、そのまま放っておくと大木になる。原産地では20m位になるそうだ。」
 言われて、文献のパキラの頁を見る。写真の花も葉も確かにパキラだった。Tによると、地植えで大木になったパキラはそう珍しいものではないそうで、大木のパキラもあるということを知っていて公園などを散策すると気付くはずとのこと。

 鉢植えのパキラしか知らなくて、パキラは高させいぜい3m程度の中木であろうという私の先入観が、樹木名を調べるという調査の遂行を邪魔していたようだ。これって何だか刑事ドラマみたいだ。最初からあいつが犯人だと決め付けて捜査をしている若い刑事が、いかりや長助みたいなベテラン刑事に諭される。
 「先入観は捜査の邪魔になりますよ。」って。

 カイエンナット:観葉植物・公園樹・庭木
 パンヤ科の常葉高木 分布は中南米 方言名:無し
 パキラという名でよく知られ、観葉植物の鉢物として園芸店に並ぶ。パキラという名前は属名のPachiraからきている。それでは、カイエンナットは何語なのか。カイエンは海塩という日本語で、nutは英語だ、というわけではあるまい。英語名はGuiana chestnut、ギアナの栗という意味らしい。ギアナは元フランス領、ということは、カイエンナットはフランス語?かもしれない。・・・捜査はここまで。
 ナットというからには食用になるのだろう。文献には炒って食べるとある。大家のとこのパキラには今、1個だけ実が残っている。度重なる台風のせいで多くは熟す前に落ちてしまったようだ。この1個の実、毎日観察している。熟して落ちたなら、採って、食ってみようと思っている。

 花

 実
 記:2004.11.19 島乃ガジ丸  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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