イヌマキ
 本土にはあって、沖縄には無い植物はたくさんある。サクラのソメイヨシノも沖縄には無い。ケヤキ、モクレン、ユキヤナギ、キンモクセイ、なども無い。私の旅の楽しみは、酒と旨い物だが、そういった植物を観察できるのも楽しみの一つになっている。
 今はアメリカに住んでいるが、義兄の実家は静岡にある。数年前、彼が帰省したおり訪ねる機会があった。義兄の実家のある町には同じ木で生垣をしている家が多くあった。木はイヌマキだった。イヌマキは沖縄にもあって、原産地の範囲にも含まれている。沖縄ではイヌマキを生垣に用いているのをあまり見たことが無かったので「へぇー」と感じたのであった。しかし、後日、文献を調べると、その用途として「生垣や防風林」とあったので、私の不明であったようなのだ。

 今は、でも、沖縄ではイヌマキの生垣は少ない。庭木としても減ってきている。細い葉も涼しげで、自然樹形も整っており、刈込んで形を作ることもでき、庭木として優れているのだが、いつの頃からか、キオビエダシャクが発生するようになった。この虫はイヌマキの葉を好んで食べるようで、他の樹木にはあまり見ない。暖かくなると大発生し、幹を蹴るとキオビエダシャクの幼虫が何十匹も一遍に、簾のように垂れ下がる。特に女性たちから嫌がられ、嫌がられるのは虫なのではあるが、坊主憎けりゃということだろう、庭木としての需要が少なくなったのだ。

 イヌマキ(犬槙):庭木・公園樹
 マキ科の常緑高木 国内では関東南部から南西諸島に分布 方言名:チャーギ
 昔は、イーク(モッコク)、チャーギと並び評され、木材として重宝された。木材としてのイヌマキは腐朽しにくい性質を持ち、沖縄の古い建物、木造赤瓦葺には軒の柱材としてよく用いられている。肌質もきめが細かく美しいので、床柱としても利用されている。

 仕立物
 記:2004.10.6 島乃ガジ丸  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』?沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』?海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
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