ヒメユズリハ
 2006年も早いもので、ホントーに早いもので、もう12月となってしまった。若い頃は、やれクリスマスだ、忘年会だと楽しかった12月も、歳取るにつれて侘しさが増してくる。そんな侘しさが、厳しい寒さの倭国であるならば、文学や哲学に発展するのであろうが、沖縄ではなかなかそうは行かない。
 侘しさで一句ひねらなくちゃ、と、冬景色を期待して窓の外を見る。ところが、私の座っている位置から見える約20本の木のうち、2本のサクラと1本のサルスベリを除いては、みなまだ青々と茂っている。窓の外をヒラヒラと舞い落ちる枯葉を期待したが、それは無いのである。その代わりヒラヒラと蝶々が飛んでいきやがった。
 どうも、沖縄の景色は侘しさに適さないようだ。まあ、だから、ウチナーンチュには脳天気な人間が多いのであろう。もちろん、私もその内の一人。

 脳天気ではあっても、肉体的には着実に歳を取っていく。仕事も、あと10年もすれば引退ということになるであろう。あと10年もすれば私も落葉ということ。
 後進に道を譲ることについて、私はほとんど抵抗が無い。むしろ、私の後継者を作ることについては積極的でさえある。3、4年前からの職場の忘年会、新年会などで、「知っていることは何でも教えるから、誰でもいいから俺の仕事を覚えてくれ」と言っている。ところが、まあ、パソコンというものは期間を集中してやらないとなかなか覚えない。たまに来て、「これはどうすればいいですか?」と訊いて覚えたとしても、それは覚えるべき事柄の一万分の一でしかない。道は遠い。

 ユズリハは「新しい葉が生長してから古い葉が譲って落ちるので、この名がある」(広辞苑)とのことだが、「新しい葉が生長」しないうちに、私は枯葉になりそうだ。いや、威張って言うほど私も仕事ができるわけじゃないが、でも、もしかしたら、沖縄の多くの木のように、後進に道を譲らない古葉となっているかもしれない。

 ヒメユズリハ(姫譲葉):主木・添景
 ユズリハ科の常緑高木 原産分布は福島以南、南西諸島、他 方言名:ユムナ
 ユズリハは交譲木、または楪と漢字で表し、「新しい葉が生長してから古い葉が譲って落ちるので、この名がある」(広辞苑)とのこと。本種はユズリハ属(Daphniphyllum)の一種で、全体的にユズリハより小ぶりで、葉も小さいのでヒメがつく。
 ヒメユズリハの載っている文献が2冊あるが、それらにはトウダイグサ科とある。ネットで確認するとユズリハ科とあった。おそらく、それらの文献が出版された後に、ユズリハ、及びそれに属する種はユズリハ科として独立したのであろう。
 高さ5〜10mになる。成長が遅く、自然に整った形となるので、民家の庭木としても使いやすい。花は目立たないが、開花期は3月から4月。
 なお、ユズリハについては、ネットでその分布を調べると南西諸島も含まれていた。ところが、参考にしているどの文献にもその記載が無い。個体数が少ないのか、庭木や緑化樹としては使いづらいのか、あるいはまた別の理由があるのか、不明。

 葉

 実
 記:島乃ガジ丸 2006.12.2  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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