ヒカンザクラ
 ちょうどこの時期、一月の中旬から二月初旬にかけて名護市、本部町などでは桜祭りが行われている。今年は暖冬のせいで開花が遅れたとニュースでやっていた。ということはこの週末、明日、明後日(5日、6日)辺りが満開の、見頃かもしれない。
 倭の国の花見は、主にソメイヨシノという品種の桜で、他のヤマザクラ、シダレザクラなどを含め、いずれも暖かくなってから開花する。したがって桜前線は南から北へ上って行く。沖縄の花見の桜、ヒカンザクラは寒くなってから開花する。したがって桜前線は山から里、北から南へと下がって行く。今ごろ、名護、本部では満開であろうが、那覇はまだまだこれから。近所に数本ある桜もやっと少しずつ開き始めた状態。
 アパートの向かいの家にも1本あり、毎年たくさんの花をつけてくれる。パソコン作業などに使っている私の机は窓の傍にあり、その桜がそっくり見える。私の机はまた、ダイニングテーブルも兼用しているので、桜の花の時期(もうすぐだ)には毎晩、窓の外に顔を向けながらの花見酒となっている。

 明日、明後日は人出が多いであろうヒカンザクラの名所は本島北部にあり、名護城、勝山、八重岳などが有名。その八重岳に、私も20年程前、花見に出掛けたことがある。山を登る道の両脇にヒカンザクラは植えられている。山道は右へ左へ蛇行しながら続いている。右から左から濃いピンクが私の視界を覆う。右へ左へひっきりなしに車のハンドルを回しながら、その桃色の激しさに目眩がして、私は途中で引き返した。
 濃い桃色は、1本だけの方が私は好き。目眩もしない。向かいの家のヒカンザクラは、だから毎年楽しませてもらっている。

 花が散るとサクランボもできる。アメリカンチェリーのように色は濃い。不味くは無いが、美味しいともいえない。手に入ることがあった場合、私は泡盛に漬けている。良い色のリキュールとなる。サクラのチップは燻製に用いる。良い香りの燻製ができる。

 ヒカンザクラ(緋寒桜):庭木・花木
 バラ科の落葉高木 原産分布は琉球列島、台湾、中国南部 方言名:サクラ
 高さ10mに達する沖縄の代表的な花木。別名カンヒザクラと言うが、これは、ヒカンザクラがヒガンザクラ(彼岸桜)と混同されやすいため、寒・緋・桜と字順を変えた読み方をしたもの。英語名はTaiwan cherryとなっているが、沖縄も原産地の一つ。
 花は前年枝に着生するので、伸びすぎて邪魔になった枝などを切る場合は、4月頃に行う。切り口から腐朽することが多いので、蝋などを塗って水の浸入を防ぐようにする。
 日当たりが良いと花付きも良い。花は下垂して下向きに咲く。濃紅色(緋色)から淡桃色と実生株に花色の変化が見られ、数種類の品種がある。花期は1月から2月。採種期は3月から4月。石垣島荒川の「荒川のカンヒザクラ自生地」は国指定の天然記念物。

 花

 花満開

 実
 記:2005.2.4 島乃ガジ丸  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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