ヒカゲヘゴ
 私の部屋は西向きに大きな掃出し窓が2つあり、その窓の傍に食卓兼事務机が置いてある。食事の時も、こうやってパソコン作業をする時もその机の前に座っている。
 西向きと書いたが、正確には西南西に向いているといった方が近い。6月下旬の夏至の頃からしばらくの間は、机に西日は差すが、椅子に座っている私には壁に遮られて西日は当たらない。それが、しだいに夏が深まって、暦の上では立秋が過ぎる頃になると、西日が体にも当たるようになる。8月の中旬というもっとも暑い時期に、西日が激しく当たるということになるのである。その頃はまた、風も少ない。辛い日々。
 午後4時か5時頃になると西日を簾が遮ってくれる。それでも、亜熱帯の太陽の熱射は強力なので、簾の隙間から漏れる日差しだけでもかなり暑い。右の腕から手の甲にかけて熱くなり、机の上が熱くなり、椅子の右半分が熱くなる。おそらく、机付近の温度は40度近くに達しているに違いない。それでも私は我慢できる。ただ、私は我慢できるが、パソコンは我慢できないに違いない。パソコンのためを思って、窓にタオルやシャツやパンツをハンガーにかけて吊るし、机の近辺に日陰を作ってあげる。
 ウチナーンチュの私はパンツで日陰を作るのだが、薩摩男子は褌(ふんどし)で日陰を作るであろう。薩摩では褌のことをヘコと言う。よって、日陰を作ってくれる褌のことを薩摩ではヒカゲヘコと呼んでいる・・・かもしれない。

 植物のヒカゲヘゴ、鬱蒼としたジャングルの、日の当たらないような所に自生しているので日陰ヘゴ、なのかと思っていたが、ヒカゲヘゴは高くなり、太陽の光をいっぱい浴びているのも多いらしい。日向でも十分に生育するのだ。なので、たぶん日陰に生息する植物という意味での日陰では無いと考えられる。私が思うに、ヒカゲヘゴの樹形が、樹冠で葉を大きく広げ、傘のような形になり、根元を日陰にしてくれる。つまり、日陰を作ってくれるからヒカゲヘゴと呼ばれている・・・かもしれない。

 ヒカゲヘゴ(日陰杪欏):添景
 ヘゴ科の常緑シダ植物 原産分布は奄美以南、沖縄、台湾、他 方言名:ヒグ
 幹が直立し、高さ10mほどになる大型のシダ。ヤンバル(沖縄本島の北部地域)の山地の谷間などに大きなヒカゲヘゴが自生していて、熱帯のジャングルのような景色、あるいは、映画などで表現される恐竜時代の景色を思わせる。
 放射状に張り出す葉は古くなると枯れて落ちる。その付け根の跡が幹に残り、面白い模様となって、それが放射状の葉とともに観賞価値を持つ。ヒカゲがどういう意味かは別にして、耐陰性はある。で、観葉植物としても利用される。ヒカゲとあるが陽光地でも育つので、民家の庭の明るいところ、暗いところどちらでも使える。ただし、独特の雰囲気を持った容姿なので、それだけで庭のイメージを変えてしまうこともあるので注意する。
 ヘゴの幹は木材として利用価値がある。床柱などにも使われるが、ポトスやモンステラなどの着生植物の着生材料として、園芸店でよく見かける。別名モリヘゴともいう。ヘゴのゴの漢字、見たことも無い難しい字だが、広辞苑にあった。
 記:島乃ガジ丸 2005.8.16  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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