アデク
 アデクとはまた不思議な名前である。これについては広辞苑に記載が無く、他の文献にも名前の由来は載っていなかった。漢字を充ててみても、亜出久、「アジアの出身で久しく存在している」といたような意味のものしか思いつかない。推測すれば、アデクとはガジュマルと同じく琉球語(広辞苑にそうある)による呼び名アディクが元となったのかもしれない。であっても、しかし、ウチナーグチ(沖縄口)のアディクが意味不明。

 那覇近辺ではあまり見かけないアデクだが、ヤンバル(山原、沖縄島北部の通称)ではあちこちで見かけられるらしい。
 「アリカークマカーあし木」とは「あちらこちらにある木」という意味。アリカークマカーが詰まってアリクとなり、ウチナーグチではラ行とダ行が混用されるのでアディクと呼ばれるようになった。あるいはまた、
 「鉈ンシ切ララン木ぬアンドー」(鉈でも切れない木があるぞ)
 「ユクサーヒャー、鉈ンシ切ララン木ぬんでぃアミヒャー」(嘘つきめ、鉈でも切れない木なんてあるものか)
 「ナラ、マジ、タミシマー」(なら、先ず、試してみろ)ということで、男がアデクの木を切ろうと鉈を振るが、アデクは堅くてなかなか切れない。
 「アリ!クファサシェーヤー」(ほら、堅いだろう)
などということが、昔あったかもしれない、そして、鉈でも切れない木は、「ほら、堅い木」という意味の「アリクファサ木」が詰まって「アリク木」となり、ラ行がダ行に転じてアディクになった。・・・なんていうことは、たぶん、無いだろうな。

 アデク(あでく):主木・添景
 フトモモ科の常緑中木 原産分布は九州南部、南西諸島、他 方言名:アディク
 アデクという名前の由来は不明だが、おそらく、方言名のアディクがそのまま和名になったのではないかと推測される。しかしまた、方言名アディクの由来も不明。
 陽光地を好むが半日陰でも成育する。高さは10mほどに留まり、成長は遅い。また、萌芽力が強く、刈り込みが効くので形が作りやすい。生垣に使え、葉も小さめなので盆栽仕立てにも向く。それらの特徴から民家の庭木に適していると思うのだが、酸性土壌を好むようで、アルカリ土壌の那覇近辺ではあまり見かけない。那覇にある知人の家に何本か植えられているのを見たが、育たなかったようで、数年後には消えた。
 目立たないが、開花期は5〜7月。フトモモ科には果樹が多いが、本種の果実も食用になるとのこと。材が堅いのでナタオレノキという別名もある。
 記:島乃ガジ丸 2006.12.1  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
inserted by FC2 system